「介護はまだ先」と思っている家族へ——今できる3つの準備

「うちの親はまだ元気だから、介護のことは考えていないんです」

40〜50代の方からよく聞きます。

ですが、私が現場で18年見てきて思うのは、介護はある日突然始まるということ。そして、今のうちに少しだけ準備していた家族と、まったく準備していなかった家族では、その後の選択肢の幅が大きく違うということでした。

結論からお伝えします。親が元気な今だからこそ、できる3つの準備があります。

  1. 親の「今の状態」を知っておく——健康・お金・住まいの基本情報
  2. 地域包括支援センターの場所を、ひとつ覚えておく
  3. 「もしもの時はどうしたい?」を、一度だけ聞いておく

この3つを、慌てずに、珈琲一杯分の時間で始められる形で整理します。

私は理学療法士・社会福祉士として現場で18年、いまは施設の相談員として、準備していなかったことを後悔する家族を毎日のように見てきました。今日はその経験から、まだ動かなくていい、けれど知っていると安心な準備をお伝えします。

目次

ある家族の話

Nさん(仮名)は50代の働く女性で、80代のお母さまと電話で時々話す程度の関係でした。お母さまは「まだ元気よ」と言っていて、Nさんも「介護はまだ先」と思っていました。

ある朝、お母さまが家で転倒して骨折。救急搬送されて入院。Nさんは病院に駆けつけたものの、

・母のかかりつけ医がどこか分からない
・母の通帳やお薬手帳がどこにあるか分からない
・母が「どんな介護を望んでいるか」一度も聞いたことがない
・地域包括支援センターという言葉も、初めて聞いた

「あの時、ほんの少しでも話していれば……」と、Nさんは肩を落としていました。

これは介護の現場で本当によくある後悔です。親が元気なうちに「ほんの少し」話していれば、選べる道はもっと広かった——そう思う家族をたくさん見てきました。

なぜ「元気な今」が準備に向いているのか

介護の準備は、親が元気な今だからこそ、できることがあります。

1. 親と「冷静に」話せる

倒れたあと、入院中、退院直前——いずれも家族は焦っています。焦った状態では、本人の希望を丁寧に聞く余裕はありません元気な今なら、「ちょっと聞いてみたかった」というトーンで自然に話せます。

2. 親が「自分の意思」で答えられる

認知機能が落ちてから聞いても、本人の本当の希望は引き出しにくい。意思決定能力がしっかりしているうちに聞いておくことが、本人のためにも家族のためにもなります。

3. 焦らず情報を集められる

ある日突然始まる介護では、家族は数日のうちにたくさんの判断を迫られます。事前に基本情報を知っているだけで、判断のスピードと正確さが変わります

今できる3つの準備

ここからは、今夜から始められる具体的な準備です。全部やる必要はありません。1つから動いてみてください。

準備①|親の「今の状態」を知っておく

まずは、親の基本情報を、家族で共有できる状態にしておきます。完璧でなくて大丈夫。分かる範囲でメモするだけで十分です。

知っておきたい7項目:

かかりつけ医(病院名・診療科)
飲んでいる薬(お薬手帳の場所)
健康保険証・介護保険被保険者証(65歳以上)の場所
通帳・印鑑のおよその保管場所
家のかぎや火災保険など、生活インフラの契約先
親しい友人・親戚の連絡先
ご本人が「もしもの時は誰に連絡してほしいか」

今夜使える1行スクリプト

「お母さん、何かあった時のために、書類どこにあるか教えてほしいんだ」

「介護の準備」ではなく「何かあった時のため」と切り出すと、親も話しやすくなります。

準備②|地域包括支援センターを、ひとつ覚えておく

地域包括支援センターは、市区町村ごとにある「介護のなんでも相談窓口」。介護がまだ始まっていなくても、相談無料・年齢制限なしで利用できます。

今夜の準備は、「実家の地域包括支援センターを検索して、電話番号をメモする」だけ。それだけで、いざという時に「どこに電話すればいいか分からない」状態から脱出できます。

今夜できる検索

「お住まいの市区町村名 + 地域包括支援センター」で検索

家族のスマホのメモアプリに、電話番号と所在地を入れておくだけで、不安が一段下がります。

準備③|「もしもの時はどうしたい?」を、一度だけ聞いておく

これが一番大事で、一番難しい準備です。

「いつか動けなくなったり、自分で決められなくなったとき、どうしたい?」

この問いを、親が元気な今のうちに、一度だけ、軽く聞いておきます。重く話す必要はありません。テレビでそういう話題が出たときや、ニュースを見ているときなど、自然な流れでOKです。

聞いておきたい3つ:

介護が必要になったら、自宅か施設か、どちらを望むか
延命治療(人工呼吸器・経管栄養など)について、どう考えているか
お金のこと(介護にどれくらいかけられるか、預貯金の意思)

すべて答えてもらえなくて大丈夫。「一度、軽く聞いた」という事実が、いざという時の家族の判断を大きく助けます

今夜使える1行スクリプト

「もしもの時、お父さん(お母さん)はどうしたい?って、いつか聞いておきたいなと思って」

「いつか」と添えることで、相手にプレッシャーを与えずに切り出せます。

ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ

最後に、今夜あなたのポケットに入れて帰っていただきたいひとつだけ、お渡しします。

介護はある日突然始まる。「まだ先」と思っている今こそ、3つの準備をする。 親の基本情報・地域包括支援センターの電話番号・親の希望——これだけ。

私が現場で見てきたなかで、準備していてよかった」と言わなかった家族はいません逆に、「準備していなかった」と後悔する家族は、本当に何人も見てきました。

まだ先」と思っているこの時期こそ、3つのうち1つだけでも動いておくと、未来の自分と家族が楽になります。

次の行動|今夜できる3つ

3つの準備のうち、今夜のうちに1つだけを動かしてみてください。

実家の地域包括支援センターを検索して、スマホにメモする
親のかかりつけ医の名前をメモする(電話で聞いてもOK)
親と次に会ったときにもしもの時のこと、いつか軽く聞いておきたいと一言、種をまく

3つのうち1つだけでいいです。「今は動かなくていい」と思っていた介護の話が、ほんの少しだけ手元に近づきます。

このブログでは、こうした「家族が動くための具体的な手順」を、これからもひとつずつ書いていきます。関連記事として、

もよかったらどうぞ。

珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。

メガネ

出典・参考

※介護の準備は、ご家族それぞれの状況により変わります。 不明な点や個別の相談は、お住まいの地域包括支援センターでご相談ください。

最終更新日:2026年5月

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この記事を書いた人

メガネのアバター メガネ 理学療法士、社会福祉士、ケアマネ

PT(理学療法士)×社会福祉士×ケアマネジャーの三刀流。
介護の現場で感じたことを珈琲一杯分ずつ率直に届けます。
コーヒー好き。

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