介護保険、申請しても損する人がいる理由と3つの対策

介護保険で損をしやすい3つのパターン(要介護度・タイミング・限度額)を示したインフォグラフィック

「介護保険を申請すれば、あとは安心」——そう思っていたら、損をするかもしれません。

現場でよく見るのは、申請したにもかかわらず「思っていたサービスが使えない」「料金が想定より高くなった」「退院後にサービスが何もなかった」という状況です。申請さえすれば大丈夫、は介護保険では通用しないことがあります。

この記事では、介護保険を申請しても損してしまう3つのパターンと、その対策を整理します。PT・ケアマネジャー・社会福祉士として現場18年、FP3級の視点からお金と制度の両側面でお伝えします。

目次

Eさんの話——「要介護1」で出てきたが、毎晩起き上がりに介助が必要だった

Eさん(仮名)の母親(82歳)が、脳梗塞の後遺症で退院を迎えました。退院後に介護保険を申請し、認定が出たのは「要介護1」。

ところが実際は、夜中に2〜3回トイレに起きるたびに介助が必要で、一人では立ち上がれない状態でした。

ケアマネに相談すると、こう言われました。「認定調査のとき、お母さまが調査員の前で頑張ってしまったのかもしれません。本人が見栄を張ることで、普段より状態が良く評価されてしまうケースは少なくありません

Eさんは申請の仕組みも支給限度額のことも知らなかったため、結果に疑問を持つことさえできなかった、と話していました。

損するパターン①——要介護度が実態より低く出てしまう

介護認定は「認定調査」と「主治医の意見書」をもとに決まります。問題になりやすいのが、認定調査の場面です。

調査員が自宅や病室で本人の状況を確認するとき、本人が「頑張ってしまう」ことで普段より良い状態を見せてしまい、実際より低い要介護度が出てしまうことがあります。

要介護度が低いと、使えるサービスの上限額(区分支給限度額)も低くなります。必要なサービスが使えない、あるいは自己負担が増えるという状況につながります。

今日から使える一言
「認定調査では、一番大変な日を想定してその状態を伝えてください」
ケアマネや認定調査員に、そのまま使えます。

損するパターン②——申請のタイミングが遅すぎる

介護保険の申請から認定結果が出るまで、平均30日前後かかります。退院後に動き始めると、サービスが使えない空白の1か月が生まれます。

サービスが何もない状態でいきなり在宅介護が始まると、家族の負担が一気に集中します。「退院してから申請しよう」が最も多い損のパターンの一つです。

申請は入院中に家族が代わりに行えます。退院が決まったときが、動き始める最初のタイミングです。市区町村の窓口または病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)に相談するとスムーズです。

今日から使える一言
「退院前に介護保険の申請をしておきたいのですが、どこに連絡すればいいですか?」
病院のMSWまたは市区町村窓口に、そのまま使えます。

損するパターン③——区分支給限度額をオーバーして全額自己負担になる

介護保険には、要介護度ごとに1か月に使える上限額(区分支給限度額)が決まっています。この上限を超えた分は介護保険が適用されず、全額自己負担になります。

要介護度別の区分支給限度額(2024年度・1単位10円換算の目安)

要介護度上限額(月)自己負担の目安(1割)
要支援1約5万円約5,000円
要支援2約10.5万円約10,500円
要介護1約16.7万円約16,700円
要介護2約19.7万円約19,700円
要介護3約27万円約27,000円
要介護4約30.9万円約30,900円
要介護5約36.2万円約36,200円

例えば要介護1の場合、月に使える上限は約16.7万円です。ヘルパー・デイサービス・福祉用具レンタルを組み合わせると、気づかないうちに上限に近づき、超えた分は全額自己負担になります。

ケアマネと相談せずにサービスを追加すると、超えた分は自費になります。毎月のサービス利用票で確認する習慣をつけることが重要です。

今日から使える一言
「今月の利用額は、限度額に対してどのくらいですか?」
ケアマネへの月1確認として、そのまま使えます。

損しないための3つの対策

対策①——認定調査は「普段の状態」を正確に伝える

調査員が来る前に、家族でメモを準備しておくと役に立ちます。「いつもより悪い日の状態」を具体的に伝えることが、正確な認定につながります。

・夜中に何回起きているか
・トイレ・食事・着替えに介助が必要かどうか
・最も状態が悪かった日の様子(転倒・混乱・興奮など)
・かかりつけ医に「普段の状態」を伝えておく(主治医意見書に反映される)

もし認定結果に納得がいかない場合は「審査請求(不服申し立て)」という手続きがあります。認定結果が届いてから60日以内に申し出ることができます。

対策②——退院が決まった時点で申請を始める

申請から認定まで平均30日かかります。入院中に申請しておけば、退院直後からサービスを使える状態が整いやすくなります。

・退院決定後すぐに市区町村の介護保険課に電話
・病院のMSWに「申請の手伝いをしてもらえるか」と相談する
・申請書類は市区町村に郵送・FAXでも対応可能な場合が多い

対策③——ケアマネと毎月の利用額を確認する

毎月ケアマネから届く「サービス利用票」に、その月の利用額と上限額が記載されています。上限の80%を超えたらケアマネに相談するのが目安です。

・利用票の「合計単位数」と「支給限度基準単位数」を見比べる
・上限が近い場合はサービスの優先順位をケアマネと相談する
・上限を超えても必要なサービスは「全額自己負担で継続」という選択肢もある

申請タイムライン|いつ何をするか

退院の日程が決まったら、このタイムラインを目安にしてください。

退院決定後すぐ

・市区町村に連絡して介護保険を申請する
・病院のMSWに退院後の生活について相談する

申請から1〜2週間後

・認定調査(自宅や病室で調査員が面談)
・「普段の状態メモ」を持参して調査員に伝える

申請から平均30日前後

・認定結果が届く(要支援1〜要介護5のいずれか)
・ケアマネを決定してケアプランの作成を開始

認定後

・サービス開始
・毎月のサービス利用票で利用額を確認する習慣をつける

今日から動けること

・介護保険の申請状況を確認する(未申請なら今すぐ市区町村またはMSWへ)
・認定調査前に「普段の状態メモ」を1枚作っておく
・ケアマネに「今月の利用額と限度額の差」を確認する

申請はゴールではなく、スタートラインです。使い方を知っておくだけで、同じ制度でも得られるものが大きく変わります。

「申請すれば大丈夫」ではなく、申請の後にどう使うかが大切です。3つのパターンを知っておくだけで、介護保険の使い方はまったく変わります。

珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。メガネ

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出典・参考

  • 厚生労働省「介護保険制度における区分支給限度基準額及び種類支給限度基準額」https://www.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「要介護認定に係る法令」https://www.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「介護保険制度について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html

※本記事の金額・単位数は2024年度の目安です。地域や事業所により異なります。個別の状況は担当ケアマネジャーまたは地域包括支援センターにお問い合わせください。

最終確認日:2026年6月

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この記事を書いた人

メガネのアバター メガネ 理学療法士、社会福祉士、ケアマネ

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