「来週、調査員の方が来ますって言われたんですが……何を準備すればいいんですか?」
介護保険の申請をした後、こういう相談をよく受けます。「何を聞かれるのか」「どんな顔をしていればいいのか」——初めての方にとって認定調査はとにかく不安なものです。
この記事では、理学療法士・社会福祉士・ケアマネジャーの3つの視点から、介護認定調査の当日の流れと、家族が知っておくべきポイントをやさしく整理します。難しいことは何もありません。順番に読んでいただければ大丈夫です。
介護認定調査とは——30〜60分で何が決まるのか
要介護認定を申請すると、市区町村から認定調査員が自宅(または入院先・施設)に訪問します。調査員がご本人の状態を直接確認し、その結果と主治医の意見書をもとに介護度(要支援1〜2・要介護1〜5)が決まります。
この認定結果が、利用できる介護保険サービスの種類と量(支給限度額)を左右します。「思っていたより介護度が低かった」という声も多いため、調査当日の伝え方がとても大切になります。
・所要時間:30〜60分程度
・場所:自宅・病院・施設(申請者がいる場所ならどこでも可)
・費用:無料
・同席:家族の同席OK(むしろ推奨)
・結果通知:申請から約30日後
当日の流れ(時系列)

「何が起きるか分からない」という不安は、流れを知るだけでほぼ解消します。
・① 挨拶・説明(約5分):調査員が来訪。本人確認と調査内容の説明
・② 本人への聞き取り・動作確認(約20〜40分):74項目の確認。立つ・歩くなど動作も見る
・③ 家族への確認(約5〜10分):日常の様子・困っていることを家族から補足
・④ 終了・案内(約5分):今後の流れの説明。不明点はここで質問
全体を通して会話ベースで進みます。試験ではありませんので、「正しく答えなきゃ」と緊張しすぎなくて大丈夫です。
調査員は「何を」「どう」見ているか——74項目の中身
調査には74項目の基本調査があります。大きく5つの領域で構成されています。
① 身体機能・起居動作(13項目)
麻痺・拘縮の有無から始まり、寝返り・起き上がり・座位保持・立ち上がり・歩行・洗身・つめ切り・視力・聴力などを確認します。実際に動いてもらうこともあります。
② 生活機能(12項目)
移乗・移動・嚥下・食事摂取・排尿・排便・口腔清潔・洗顔・整髪・更衣・外出頻度など、日常生活の動作全般を確認します。
③ 認知機能(9項目)
意思の伝達・毎日の日課の理解・生年月日や年齢の理解・短期記憶・今の季節や場所の理解・自分の名前の理解などです。
④ 精神・行動障害(14項目)
被害的な言動・作話・感情の不安定さ・昼夜逆転・同じ話をする・大声・介護への抵抗・徘徊・物を壊すなどの行動の有無を確認します。
⑤ 社会生活への適応(8項目)
薬の内服・金銭管理・日常の意思決定・買い物・簡単な調理・電話の使用など、社会生活に必要な行動の自立度を確認します。
各項目は「能力(できるかどうか)」「介護の手間(介助の度合い)」「有無(症状・行動の有無)」の3軸で評価されます。評価されるのは「調査日のベスト」ではなく「普段の状態」です。
「普段よりしっかりしてしまう」——最も多い失敗
認定調査でよく起きる問題が、ご本人が普段より「しっかり」してしまうことです。
見知らぬ人が来ると緊張して背筋を伸ばす、普段は手伝いが必要なのに「自分でやります」と張り切ってしまう——これはご本人の気遣いや意地から来る自然な反応です。
特に認知症の方は、初対面の相手と短い会話をすると比較的しっかり答えられることがあります。「今日は調子が良かった」ではなく、それが認知症の特性です。

こんな場面に注意してください。
・「自分で歩けます」と言って歩いたが、普段は転倒リスクがあり見守りが必要
・調査員の質問には答えられたが、日常では同じことを何度も聞く
・「トイレは一人でできます」と言ったが、夜中は失敗していることがある
→ これらは家族が「補足」することで、正確な評価につながります。
PT視点——「動作」の伝え方
理学療法士として多くの認定調査に関わってきて気づくのは、「できる・できない」の二択では伝わらない情報がたくさんあるということです。



こう言い換えると正確に伝わります。
❌「歩けます」→ ✅「一人で歩けるが時間がかかり、転倒が心配で必ず見守っています」
❌「立てます」→ ✅「つかまれば立てるが、つかまるものがないと立てない」
❌「着替えできます」→ ✅「上着は自分でできるが、ズボンは毎回手伝っています」
❌「食事できます」→ ✅「自分で食べるが、こぼすことが多くエプロンが必要」
「能力はある」と「安全にできる」は別の話です。「一人でするときに心配なので見守りが必要」という状態を、具体的な言葉にしてください。それが正しい介護度につながります。
ケアマネ視点——「生活の困りごと」の伝え方
ケアマネジャーとして家族に必ずお伝えしているのは、「最悪の状態を教えてください」という一言です。
調査員が来た日がたまたま調子の良い日だったとしても、「先週はこんな状態でした」という日常の記録が正確な評価につながります。事前に書き出しておきましょう。
・排泄の失敗はどれくらいの頻度か(日中・夜間)
・夜中に起きることはあるか、その理由は
・同じことを何度も聞くなど、記憶の問題はあるか
・一人で外に出てしまう・迷子になったことはあるか
・薬を自分で管理できているか
・食事・入浴・着替えで介助していること
・介護している自分が疲弊していること(これも立派な「困りごと」)
家族の同席の仕方——「補足」が認定精度を上げる
家族は調査に同席できます。というより、積極的に同席することをおすすめします。
ただし、ご本人が答えている途中で口を挟みすぎると、ご本人の実際の能力が分かりにくくなることもあります。基本はご本人に答えてもらい、終わったあとに補足するスタイルが理想的です。
・「普段困っていること」「最近できなくなったこと」をメモにまとめておく
・「補足してもよいですか?」と一言添えてから話す
・「○○のときは△△で介助が必要です」と具体的に伝える
・調査員に「特記事項に入れてほしい」と依頼することもできる
結果が出るまでの間にできること
認定結果は通常申請から約1か月後に通知されます。退院が近い・すぐにサービスが必要——そんな場合は「暫定ケアプラン」を使えば、結果が出る前からサービスを始めることができます。
結果に納得できない場合は、通知から60日以内に不服申立て(審査請求)ができます。「もう一度調査してほしい」という場合は担当のケアマネや地域包括支援センターに相談しましょう。
・認定調査(訪問)
・主治医意見書の作成(主治医に依頼)
・コンピューター一次判定
・介護認定審査会(二次判定)
・認定通知(申請から約30日)
まとめ——調査員はあなたの味方です
介護認定調査は「審査されている」というより、「今どんな支援が必要かを一緒に確認してもらう場」だと思っています。
調査員は正確な評価をしようとしています。だからこそ、家族が日常の状態を正確に伝えることが、適切なサービスにつながります。「普段より頑張ってしまう」お父さん・お母さんの代わりに、家族が言葉にしてあげてください。それが介護の最初の大事な一歩です。



認定調査、当日のポイントはこれだけ。
①普段の最悪の状態を家族がメモしておく
②「できるか」より「安全にできるか」で伝える
③補足は「よろしいですか?」の一言添えて
調査員は敵ではなく、一緒に考えてくれる専門職です。
珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。メガネ
次の行動|今日できること
調査前に、1つだけやっておいてください。
・「普段困っていること」をメモ帳に3つ書き出す
・「最近できなくなったこと」を具体的に1つ書き出す
・夜間・排泄・記憶に関して「最悪だった日」を思い出してメモする
出典・参考
- 厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順」(2024年度版)
- 厚生労働省「認定調査員テキスト2009改訂版」
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」
- 一般社団法人 日本介護支援専門員協会「ケアマネジャーの役割について」
※本記事は介護認定調査に関する一般的な情報です。個別の状況については、お住まいの地域包括支援センターや担当ケアマネジャーにご相談ください。
最終確認日:2026年6月









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