兄弟姉妹で介護の役割分担——話し合いで先に決めておく3つのこと

「介護を機に、兄弟仲が悪くなった」

介護の相談を受けるなかで、本当によく聞きます。

実は、兄弟が揉める原因のほとんどは、最初に決めておかなかったから起きるものです。介護そのものより、誰が・いくら・どう動くか」が曖昧なまま走り出すと、必ずこじれます

私は理学療法士・社会福祉士として介護保険の現場で18年、いまは施設の相談員として、家族の話し合いに同席することもよくあります。今日は社会福祉士として家族支援を続けてきた経験から、お伝えします。

結論:兄弟で揉めないために、最初に決めておく3つのことがあります。

  1. お金:誰が、いくら出すか
  2. 実働:誰が、何をするか
  3. 最終決定者:誰が、最後に決めるか

この3つを最初に決めるかどうかで、その後の家族関係が大きく変わります。今日はその使い方と、家族会議でつまずくポイントを整理します。

目次

なぜ「お金・実働・最終決定者」の3つなのか

兄弟の揉め事は、多くの場合、この3つのどれかが曖昧なまま始まります。

お金が曖昧:「誰がどれくらい払うか」を決めないまま介護が始まると、月日が経つにつれ「自分ばかり負担している」「他の兄弟は出していない」という不満が積もります。

実働が曖昧:通院の付き添い、買い物、施設見学、書類手続き——介護には膨大な「動き」があります。「誰がやるか」を決めないと、結局近くに住んでいる兄弟一人に集中します。

最終決定者が曖昧:施設入所、医療の選択、看取り——重い決断の場面で「誰が最終的に決めるのか」が決まっていないと、合意形成に時間がかかり、本人の状態が悪化することもあります。

この3つを最初に決めておくだけで、その後の混乱は驚くほど減ります。

ある家族の話

Gさん(仮名)は3人兄弟の長女で、80代のお母さまの介護が始まったばかり。
兄弟は3人とも仲が良く、「みんなで協力して見ていこう」と話していました。けれど半年後、Gさんが疲れ切った表情で相談に来られました。
「結局、私が一人で動いている気がするんです。お金も何となく私が立て替えて、兄たちはたまに『大丈夫?』と聞くだけ。介護のことを何も決めていないから、誰に何を頼んでいいかも分からなくて……」
Gさんの兄弟は、決して悪い人たちではありません。ただ、最初に「3つ」を決めていなかっただけでした。

私はGさんに、「もう一度、3人で集まって、お金・実働・最終決定者の3つを話し合ってください」と伝えました。1ヶ月後、Gさんから「兄たちが、思った以上に動いてくれるようになった」と連絡がありました。

決まっていないことは、家族でも動けない——
それが現場でよく見る現実です。

家族会議で先に決めておく3つのこと

ここからは、今夜から使える具体的な決め方です。家族会議の前に、この3つを下書きしておくと、話し合いがスムーズに進みます。

1. お金|誰が、いくら出すか

決めておくべきこと:

  • 介護費用は誰が立て替える
  • 月額の費用をどう分担するか(均等割り/所得に応じて/ある兄弟が多めに)
  • 親の年金・貯蓄を誰が管理するか

ポイントは、「お金は均等」が必ずしも公平とは限らないことです。実働を多くする兄弟がいるなら、その分お金の負担を軽くするなど、お金と実働を組み合わせて公平を作るのが現実的です。

2. 実働|誰が、何をするか

決めておくべきこと:

  1. 通院の付き添いは誰か
  2. 施設見学・書類手続きは誰か
  3. 日常の連絡係(ケアマネとのやり取り)は誰か
  4. 緊急時に駆けつけられるのは誰か(住んでいる距離も考慮)

ポイントは、「月1回でも担当を持つ」ことを兄弟全員に振り分けること。「近くに住む人だけが動く」状態は、必ず崩れます。遠くに住む兄弟も、電話連絡や書類対応など、できる役割を必ず持つ

3. 最終決定者|誰が、最後に決めるか

決めておくべきこと:

大きな決断(施設入所、手術、看取りの方針など)の際に、最終的に判断する人を一人決める
多くの場合、親と一番近くにいる兄弟が務めるのが現実的
最終決定者には、他の兄弟が「後から文句を言わない」約束もセットで

ポイントは、決断を兄弟全員の合意で進める」のは現実的ではないということ。最終決定者を一人決めて、他の兄弟はサポートに回る——この構造を最初に作ると、迷わずに進めます。

ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ

最後に、今夜あなたのポケットに入れて帰っていただきたいひとつだけ、お渡しします。

介護で兄弟が揉めるのは、最初に「3つ」を決めていないから。 お金・実働・最終決定者を、親が元気なうちに家族会議で決めておく。

兄弟で集まる機会があれば、この3つを書いた紙を1枚用意して、話し合いの場に置いてみてください話の脱線も減り、決まることが格段に増えます。

「親の介護」は、家族にとって長距離マラソンです。最初の数百メートルで足並みを揃えておくかどうかで、ゴールまでの景色が大きく変わります。

介護保険申請や介護費用に関してお役に立ちそうなリンクも参考にしてみて下さい

このブログでは、こうした「家族が動くための具体的な手順」を、これからもひとつずつ書いていきます。

珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。

メガネ

出典・参考

※本記事は、社会福祉士としての家族支援経験に基づいた実践的なガイドです。 制度・公的支援に関する具体的な手続きは、お住まいの地域包括支援センターでご確認ください。

最終更新日:2026年5月

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この記事を書いた人

メガネのアバター メガネ 理学療法士、社会福祉士、ケアマネ

PT(理学療法士)×社会福祉士×ケアマネジャーの三刀流。
介護の現場で感じたことを珈琲一杯分ずつ率直に届けます。
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