理学療法士と社会福祉士、2つの視点で介護を支える——現場18年、私が見てきた景色

理学療法士と社会福祉士が家族と話し合っているイラスト——リハビリと生活支援の連携場面

「理学療法士と社会福祉士、両方持っているんですか?ずいぶん違う資格ですよね」

よく言われます。

確かに、一見すると遠い資格です。理学療法士は体のリハビリ、社会福祉士は生活や制度の支援。現場でも、この2つが同じ人間に入っていることは多くありません。

でも、私は18年間、この2つを一人の中に持ちながら現場に立ち続けてきました。そこで見えてきたのは、この2つの視点が重なったとき、家族の介護支援がどれだけ変わるかということでした。

今日は、PTと社会福祉士の連携が家族にとってどう役立つかを整理しながら、私自身の経験も交えてお伝えします。

目次

Dさんの話——「リハビリの先生に、制度のことも相談していいんですか?」

Dさん(仮名)の70代のお父さまが、脳梗塞後のリハビリを続けていました。歩行能力は少しずつ回復しているものの、「退院後の生活をどう組み立てればいいか」「介護保険のサービスはどう使えばいいか」という不安を、Dさんは誰に相談すればいいか分からずにいました。

あるとき、Dさんは私にこう言いました。「リハビリの先生に、制度のことも相談していいんですか?」

「もちろんです」と答えました。

私はその場で、お父さまの現在の歩行能力と今後の回復見通しをPTとして説明しながら、同時に社会福祉士として介護保険の申請タイミング・訪問リハビリの導入・在宅サービスの選択肢を整理しました。

「体のことと生活のことを、一度に聞けるとは思っていなかった」とDさん。これが、2つの視点を持つことの強みです。

PTの視点と社会福祉士の視点——何が違うのか

理学療法士(PT)の視点

PTは、体の機能と動きを評価し、回復・維持・予防を支える専門職です。

PTが見ているもの:

・筋力・バランス
・歩行能力の現状と変化
・転倒リスクと住環境の危険箇所
・日常生活動作(ADL)——食事・着替え
・移動・入浴などの自立度
・リハビリで何がどこまで回復できるか
・「動く意欲」を引き出す関わり方

社会福祉士の視点

社会福祉士は、生活全体を支える制度・資源・人間関係を調整する専門職です。

社会福祉士が見ているもの:

・介護保険
・障害福祉など使える制度の整理
・家族関係・経済的な不安・意思決定の支援
・施設選び・退所先の調整
・地域の社会資源とのつながり
・本人と家族の「声なき声」を拾う関わり方

2つの視点が重なるとき

PTとして体を診ながら、社会福祉士として生活を診る。この2つが重なったとき、見えてくるものがあります。

たとえば、リハビリで歩行能力が回復しても、退院後の住まいに段差が多ければ、せっかくの回復が活かせないことがあります。PTとして住環境を評価し、社会福祉士として住宅改修の制度や福祉用具レンタルの手配まで一緒に考える——これが、2つの視点が重なった支援です。

また、リハビリへの意欲が低い方の背景に、経済的な不安や家族関係の葛藤が隠れていることがあります。PTとして「なぜ頑張れないのか」と悩むより、社会福祉士として「何が気になっているのか」を聞きに行く。その一歩で、リハビリが動き始めることがあります。

現場でよく見るのは、リハビリと生活支援が「別々のチーム」として動いているケースです。PTはリハビリを、MSWは制度を、ケアマネはサービスを——それぞれが専門を担う中で、情報がうまくつながらないことがある。私が2つを持っていることで、その橋渡しが少し早くできることがあります。

家族にとっての「2つの視点」の使い方

PTと社会福祉士が連携していると、家族にとっては**「体のこと」と「生活のこと」を同じ文脈で相談できる**という安心感があります。

家族が実際に相談できること:

・リハビリでどこまで回復できるか、退院後どんな生活ができそうか
・在宅に戻るために、どんな環境整備や制度が必要か
・施設か在宅か、判断に迷ったときの整理
・本人の意欲が低いとき、どう関わればいいか

「誰に何を相談すればいいか分からない」と感じたとき、PTと社会福祉士の両方の視点を持つ専門職に相談できる環境があれば、家族の負担はずいぶん軽くなります。

担当のケアマネジャーに「リハビリと生活支援、両方まとめて相談できる人はいますか?」と聞いてみてください。

今日から使える一言

「体のこととお金・制度のこと、両方まとめて相談できますか?」

18年間、2つの資格を持って現場に立ち続けて

正直に言うと、最初からこの2つの視点を活かせていたわけではありません。PTとして現場に立ちながら、「もっと生活全体を見たい」という思いが積み重なって、社会福祉士の資格を取りました。

取った当初は「結局何に使うんだろう」と迷った時期もありました。でも現場を続けるうちに、少しずつ見えてきたことがあります。体の回復を支えることと、生活の安心を作ることは、切り離せないということ。どちらか一方では、本当の意味での支援にならないことがある、ということ。

まだ答えが出ているわけではありません。ただ、2つの視点を持って現場に立ち続けることが、家族の「そうだったのか」につながる日が来ることを信じながら、書き続けようと思っています。

ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ

PTは「体」、社会福祉士は「生活」を支える。
この2つの視点が重なるとき、介護支援はもう少し、家族に寄り添えるかもしれません。

次の行動|今日からできること

・担当のPTやケアマネに「生活のことも含めて相談できますか?」と聞いてみる
・「体のこと」と「生活のこと」を分けずに、まとめて話してみる
・「誰に何を相談すればいいか分からない」と感じたら、地域包括支援センターへ

3つのうち1つだけでいいです。「体と生活、両方見てくれる人がいる」と知るだけで、介護の不安が少し軽くなります。

このブログでは、こうした「家族が動くための具体的な手順」を、これからもひとつずつ書いていきます。関連記事として、以下もよかったらどうぞ。

珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。

メガネ

出典・参考

※理学療法士・社会福祉士の業務範囲・連携体制は、医療機関や施設により異なります。
個別の相談は、担当のケアマネジャーまたは地域包括支援センターにお問い合わせください。

最終更新日:2026年6月

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この記事を書いた人

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PT(理学療法士)×社会福祉士×ケアマネジャーの三刀流。
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