「訪問看護って、もっと重い状態になってから頼むものだと思っていました」
家族からよく聞く言葉です。
結論からお伝えします。訪問看護師が現場で一番よく感じることは、「もっと早く呼んでほしかった」ということです。 重くなってから呼ぶのではなく、気になり始めたときに呼ぶ——その一歩が、その後の在宅介護を大きく変えることがあります。
私は理学療法士・社会福祉士として現場で18年、訪問看護師と連携し続けてきました。今日は、訪問看護師が現場で感じていることを、相談員の視点から代弁します。
Eさんの話——「もう少し早く相談していれば」
Eさん(仮名)の80代のお母さまが、在宅で一人暮らしをしていました。Eさんは週に一度様子を見に行っていましたが、「まだ大丈夫」と思い、訪問看護の導入を先延ばしにしていました。
ある日、お母さまが自宅で転倒。幸い骨折はありませんでしたが、それをきっかけに訪問看護が始まりました。担当の訪問看護師は、初回訪問で「足のむくみがかなり進んでいますね。心臓に負担がかかっているかもしれません」と指摘。すぐにかかりつけ医に連絡し、薬の調整につながりました。
「もう少し早く相談していれば、転倒を防げたかもしれない」とEさん。
訪問看護師も「もう少し早く呼んでもらえていたら、転倒前に気づけたかもしれない」と話していました。
訪問看護師が「早く呼んでほしい」と感じる3つの場面

①退院直後、自宅に戻ったとき
病院から自宅に戻った直後は、環境が大きく変わる不安定な時期です。病院では24時間看護師がいましたが、自宅では家族だけになります。
訪問看護師が退院直後に関わることで:
・病院での処置の継続(傷の処置・点滴・カテーテル管理など)
・自宅環境に合わせた生活動作の確認
・「何かあればすぐ連絡できる」という家族の安心感
退院後1〜2週間は、特に変化が起きやすい時期です。「退院したらひとまず様子を見よう」ではなく、退院前から訪問看護の導入を検討しておくのが理想的です。
今日から使える一言

「退院後、訪問看護を最初から入れておきたいのですが、相談できますか?」
②体調の変化が気になり始めたとき
「最近、なんとなく元気がない」「食欲が落ちている気がする」「顔色が悪い日が増えた」——こうした変化を感じたとき、多くの家族は「様子を見よう」と思います。
でも、訪問看護師はその「なんとなく」を専門職の目で評価できます。 むくみ・血圧・呼吸・皮膚の状態——家族には分からない変化を、訓練された目で見つけることができます。
現場でよく見るのは、「なんとなく元気がない」と感じてから数週間後に、心不全や肺炎の悪化が判明するケースです。早めに呼んでいれば、入院を防げた可能性がある場面を、何度も経験してきました。
今日から使える一言



「なんとなく気になることがあって……一度診てもらえますか?」
③家族だけでの介護に限界を感じ始めたとき
在宅介護を続けていると、「もう限界かもしれない」と感じる瞬間がきます。夜中の対応・体位交換・服薬管理——家族だけで抱えていることが、実はプロに頼めることだったりします。
訪問看護師が定期的に来ることで:
・医療的な処置を家族が一人で抱えなくてよくなる
・「異常なのか正常なのか」の判断を専門職に委ねられる
・家族が「少し休める」時間が生まれる
「訪問看護師さんに頼んでいいことなんですか?」と遠慮する家族をよく見ます。頼んでいいです。それが訪問看護師の仕事です。
訪問看護はどうやって頼むのか
「頼みたいけど、どこに連絡すればいいか分からない」という家族も多いです。手順はシンプルです。
・在宅介護中の方 → 担当ケアマネジャーに「訪問看護を導入したい」と伝える
・入院中の方 → 退院支援看護師またはMSW(医療ソーシャルワーカー)に相談する
・まだ介護保険を使っていない方 → 地域包括支援センター(無料・65歳以上対象)に電話する
訪問看護には介護保険と医療保険の2つの使い方があります。どちらが適用されるかは状態によって異なるので、担当者に確認してみてください。
訪問看護師に伝えてほしいこと
訪問看護師が一番困るのは、「大丈夫です」と言われることだと、現場でよく聞きます。気になることがあっても「大したことじゃないかな」「忙しそうだから」と遠慮してしまう家族が多い。
でも、訪問看護師は気になることを聞くために来ています。 遠慮は不要です。
「昨日から少し様子がおかしくて」 「自分には判断できないんですが……」
この一言が、早期対応につながります。
ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ



訪問看護は、重くなってから呼ぶものではありません。
「気になり始めたとき」に呼ぶのが、一番いいタイミングです。
「もっと早く呼んでほしかった」——そう感じた訪問看護師の言葉を、家族に届けたくて、この記事を書きました。
次の行動|今日からできること
・担当ケアマネか地域包括支援センターに「訪問看護について相談したい」と伝える
・「なんとなく気になること」を一つメモして、次の面談で話してみる
・「大丈夫です」ではなく「気になることがあって」と言ってみる
3つのうち1つだけでいいです。早めの一言が、在宅介護の流れを変えることがあります。
このブログでは、こうした「家族が動くための具体的な手順」を、これからもひとつずつ書いていきます。関連記事として、以下もよかったらどうぞ。
・訪問看護師が「助かる」と感じる家族の関わり方3つ
・看護師と社会福祉士の関係性——家族の介護を支える「医療と福祉の二人三脚」
珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。
メガネ
出典・参考
- 厚生労働省「在宅医療・訪問看護」
https://www.mhlw.go.jp/ - 公益社団法人 日本看護協会「訪問看護」
https://www.nurse.or.jp/ - 公益社団法人 日本医療ソーシャルワーカー協会
https://www.jaswhs.or.jp/
※訪問看護の体制・保険適用は事業所・状態により異なります。
個別の相談は、担当のケアマネジャーまたは地域包括支援センターにお問い合わせください。最終更新日:2026年6月




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