「最近、父の足腰が弱ってきた気がして……でも、食欲もなくて」
家族からよく聞く言葉です。
結論からお伝えします。
足腰の衰えと食欲の低下は、別々の問題ではありません。
どちらも「フレイル」というひとつの状態のサインである場合が多く、理学療法士(PT)と管理栄養士が連携して関わることで、その進行を遅らせられる可能性があります。
私は理学療法士・社会福祉士として現場で18年、高齢者のリハビリと生活支援に関わり続けてきました。今日はその経験から、フレイルとは何か、そしてPTと管理栄養士がどう連携して家族を支えるかを整理します。
Cさんの話——「歩くのも食べるのも、どちらも心配で」
Cさん(仮名)の80代のお母さまが、半年ほどで体重が3キロ減り、外出も億劫がるようになりました。Cさんは「足腰のリハビリをしてもらいたいけど、食事もちゃんと食べられていなくて……どちらを先に相談すればいいか」と迷っていました。
私はその場で、こうお伝えしました。
「どちらも同時に相談してください。食べられないから動けない、動けないから食欲が落ちる——この悪循環がフレイルです。PTと管理栄養士、両方から同時にアプローチするのが一番効果的です」
その後、PTによるリハビリと、管理栄養士による食事内容の見直しが同時にスタート。数ヶ月後にお母さまの体重が1.5キロ戻り、少しずつ体が動かせるようになりました。
「両方一緒に動いてもらえるとは思っていなかった」とCさん。これがPTと管理栄養士の連携の力です。
フレイルとは何か
フレイルとは、加齢とともに心身の活力が低下し、健康と要介護の中間にある状態のことです。英語の「Frailty(虚弱)」から来ています。
フレイルの主なサイン:
・体重が半年で2〜3キロ以上減った
・歩く速さが遅くなった、つまずくことが増えた
・疲れやすくなった、外出が減った
・食欲が落ちた、食事量が減った
・気力がわかない、閉じこもりがちになった

これらは「年のせいだから仕方ない」と見過ごされがちですが、早めに気づいて対応すれば、進行を遅らせることができます。 日本では65歳以上の約10〜15%がフレイルの状態にあるとされています。
PTと管理栄養士、それぞれの役割


理学療法士(PT)の役割
PTは、体の機能と動きの専門家です。フレイルに対しては、筋力・バランス・歩行能力の低下を評価し、その方に合った運動プログラムを組みます。
PTがフレイルに対してできること:
・筋力低下・バランス障害の評価
・転倒リスクのチェックと住環境の確認
・その方に合った運動・リハビリプログラムの立案
・訪問リハビリでの継続的なサポート
・「動く習慣」を取り戻すための動機づけ
管理栄養士の役割
管理栄養士は、食と栄養の専門家です。フレイルの背景には、タンパク質不足・エネルギー不足・食欲低下が深く関わっています。
管理栄養士がフレイルに対してできること:
・食事内容・栄養状態の評価
・タンパク質・カルシウムなど必要な栄養素の過不足の確認
・食べやすい形態や味付けの提案(嚥下(えんげ)機能に合わせた調整)
・家族への食事づくりのアドバイス ・体重・筋肉量の変化を栄養面からモニタリング
なぜ2つの専門職が連携することが大事なのか
フレイルは、運動と栄養の悪循環で進みます。
食べられない → 筋肉が落ちる → 動けなくなる → さらに食欲が落ちる
この悪循環を断ち切るには、運動だけでも栄養だけでも不十分です。
PTが「動く力」を取り戻し、管理栄養士が「食べる力」を支える——この両輪が同時に回ることで、フレイルの改善が見えてきます。
現場でよく見るのは、リハビリを始めたけれど栄養が足りていないために筋肉がなかなかつかないケースです。逆に、食事を改善しても体を動かす習慣がなければ、食べたものが筋肉になりにくい。両方がそろって初めて、効果が出やすくなります。
家族ができること——早めに気づいて、早めに相談する
フレイルは、要介護になる前の段階です。だからこそ、早めに気づいて動くことが、その後の生活を大きく左右します。
家族が今すぐできる確認:
・半年前と比べて体重が減っていないか ・食事の量や内容が変わっていないか ・外出・活動の機会が減っていないか
気になることがあれば、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに「フレイルが心配なので、リハビリと栄養の相談をしたい」と伝えてみてください。PTと管理栄養士につないでもらえます。
今日から使える一言



「最近、食欲も落ちて動くのも億劫そうで……フレイルかどうか、一度診てもらえますか?」
ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ



「食べられない」と「動けない」は、セットで相談していい。
PTと管理栄養士が連携することで、フレイルの悪循環を断ち切れる可能性があります。
年のせいと諦める前に、一度相談してみてください。フレイルは、気づけば対応できる状態です。
次の行動|今日からできること
・半年前と比べた体重
・食事量・活動量の変化を確認する
・気になることがあればケアマネか地域包括支援センターに相談する
・「リハビリと栄養、両方相談したい」と一言伝えてみる
3つのうち1つだけでいいです。早めの一歩が、その後の生活を変えることがあります。
このブログでは、こうした「家族が動くための具体的な手順」を、これからもひとつずつ書いていきます。関連記事として、以下もよかったらどうぞ。
・親の転倒を家で防ぐ完全ガイド
・親に介護が必要かもしれない——見落としがちな5つのサイン
珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。
メガネ
出典・参考
- 厚生労働省「フレイル対策」
https://www.mhlw.go.jp/ - 国立長寿医療研究センター「フレイルについて」
https://www.ncgg.go.jp/ - 公益社団法人 日本理学療法士協会
https://www.japanpt.or.jp/ - 公益社団法人 日本栄養士会
https://www.dietitian.or.jp/
※フレイルの評価・対応は医療機関や施設により異なります。
個別の相談は、担当のケアマネジャーまたはかかりつけ医にお問い合わせください。最終更新日:2026年5月




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