理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違いを解説

「お父さんのリハビリに先生が3人いるって言われたんですが……それぞれ何を担当しているのか、よく分からなくて困っています」

現場でよく聞く声です。デイケアや病院でリハビリを受けると、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士という3種類の専門職が関わります。それぞれ担当する領域がはっきり違うため、「誰に何を話せばいいのか」と戸惑うご家族も少なくありません。

結論からお伝えすると、歩く・立つが心配なら理学療法士(PT)、食事・着替えのことなら作業療法士(OT)、飲み込みやことばが気になるなら言語聴覚士(ST)です。この3つの対応をポケットに入れておくだけで、次の面会がぐっとラクになります。

目次

Kさんの話——「リハビリの先生が3人いて、誰に何を聞けばいいか分からなかった」

脳梗塞で入院されたお父さんのリハビリに付き添っていたKさん(51歳・女性)の話です。

廊下でたまたま会う先生が、毎回違う。「理学療法士の〇〇です」と挨拶してくれる日もあれば、「作業療法士の△△が担当しています」と声をかけられる日もある。言語聴覚士(ST)の先生とは、一度も直接話せないまま退院の日が来てしまいました。

退院後、ケアマネジャーとの面談で初めて「先生によって専門が違う」と知ったとき、Kさんはこう言いました。「飲み込みのことがずっと心配だったのに、誰に話せばいいのか分からなくて、何も言えなかった」と。

情報は、こちらから取りに行かないと流れていってしまうことが、現場ではよく起きます。知っているだけで、聞きに行けるのです。

それぞれの役割——何が違うのか

理学療法士(PT)とは

理学療法士(PT:Physical Therapist)は、寝返り・起き上がり・立つ・歩くといった基本的な身体の動作を専門とするリハビリの国家資格職です。3職種のなかで最も人数が多く、日本国内では現在約20万人が登録されています。

骨折や脳梗塞のあとに足の力が戻らないとき、転倒が怖くて歩けないとき、体力が落ちて立ち上がりに時間がかかるとき——こうした場面でPTが中心になります。関節を動かす練習、筋力をつける運動、バランスを整える訓練、歩行の練習、車いすの操作練習などが主な内容です。

そのまま使える一言: 「退院後の歩行のことで不安があるのですが、担当の理学療法士の先生はどなたですか?」

作業療法士(OT)とは

作業療法士(OT:Occupational Therapist)は、日常生活全般の動作と、こころのリハビリを専門とする国家資格職です。

「作業」という言葉が分かりにくいかもしれませんが、ここでいう作業とは、食事・着替え・入浴・トイレ・料理・趣味・仕事など、毎日の暮らしで行うすべての活動を指します。片麻痺(かたまひ:体の片側が動きにくい状態)で箸が使いにくくなった方に持ちやすいスプーンを提案したり、退院前にご自宅を訪問して手すりの位置を一緒に決めたりします。

認知症の方が好きな手芸を続けられるよう環境を整えること、精神科の現場でうつや統合失調症の方の社会復帰を支えることも、OTの大切な仕事です。

そのまま使える一言: 「父が着替えにとても時間がかかるようになったのですが、作業療法士の先生にも相談できますか?」

言語聴覚士(ST)とは

言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)は、ことば・きこえ・飲み込み(嚥下)を専門とする国家資格職です。3職種のなかで最も人数が少なく、現在約4万人が働いています。

脳梗塞のあとに言葉が出にくくなる「失語症(しつごしょう)」のリハビリ、加齢で飲み込みが悪くなった方の「嚥下訓練(えんげくんれん:飲み込む練習)」、難聴の方への補聴器の調整など、見た目には分かりにくいけれど、暮らしに大きく影響する領域を担当します。

こんなとき、「STに相談できますか?」の一言が、状況を変えることがあります。

・食事中によくむせる、飲み込みが心配
・ことばが出にくそう、言葉を間違えることが増えた
・聞こえにくそう、大きな声でないと反応しない

そのまま使える一言: 「最近、食事のあとによくむせているのですが、言語聴覚士の先生に診てもらうことはできますか?」

3職種の違いを表で整理する

理学療法士(PT)作業療法士(OT)言語聴覚士(ST)
専門の視点身体の基本動作日常生活・こころことば・きこえ・飲み込み
主な相談内容歩く・立つ・転倒予防食事・着替え・趣味・環境整備むせる・言葉が出ない・聴こえにくい
主な勤務場所病院・老健・デイケア・訪問病院・老健・精神科・訪問病院・老健・訪問
登録者数(目安)約20万人約10万人約4万人

PTが「下半身と基本動作」、OTが「上半身と暮らし全体」、STが「首から上のことば・飲み込み」を担当するイメージで覚えると、現場でも迷いにくくなります。

退院後のリハビリ定着まで——いつ・誰に相談するのか

入院直後(〜1週間)

病棟のリハビリスタッフが評価を行い、PT・OT・STそれぞれの担当が決まります。このタイミングで「リハビリの担当の先生はどなたですか?」と確認しておくと、その後の面会で話しかけやすくなります。

入院中(1週間〜退院2週間前)

PT・OT・STによるリハビリが並行して進みます。退院後の暮らしで心配なことをメモしておき、どの先生でもいいので「これ、誰に相談すればいいですか?」と声をかけてみてください。チームで情報が共有されているため、適切な専門職につないでもらえます。

退院1〜2週間前

退院前のカンファレンス(話し合い)にご家族も参加できる場合があります。OTが自宅を訪問して環境を確認することも。介護保険の訪問リハビリや通所リハビリ(デイケア)への引き継ぎも、この時期に動き始めます。

退院後〜在宅定着期

ケアマネジャーを通じて、訪問リハビリや通所リハビリでPT・OT・STと継続してつながります。困りごとが変わったら、その都度担当者に伝え直すことで、内容も変えていけます。

家族からよくある質問

Q. 3人それぞれに、同じことを話しかけていい?

はい、問題ありません。担当が分かれていても、情報はチームで共有されています。どの先生に伝えても、必要な情報は他の専門職にも届く仕組みになっています。気になることは、話しかけやすい先生にまず伝えることで十分です。

Q. 訪問リハビリでも3職種は来てくれますか?

事業所によって異なります。希望する職種がある場合は、ケアマネジャーに「OTに来てほしい」「STに診てもらいたい」と具体的に伝えると、対応できる事業所を探してもらいやすくなります。

Q. デイケア(通所リハビリ)にもSTはいますか?

デイケアでは主にPTやOTが担当することが多く、STは施設によって配置が異なります。「STがいるデイケアを探したい」とケアマネジャーに相談してみるという選択肢もあります。

Q. PT・OT・STのどれが必要かは、どうやって判断するのですか?

医師やケアマネジャーからの指示・提案が基本になります。ただ、「むせが気になる」「着替えに時間がかかるようになった」など、生活の中で感じた変化はご家族にしか見えていないことも多いです。遠慮なく伝えてください。専門家が適切な職種に振り分けてくれます。迷うのは自然なことです。

家族はどう使い分ければいいか

3職種をうまく活用するために、ご家族側でできることを3つに絞ってお伝えします。

・「何が心配か」を場面で具体的に伝える
・担当リハビリの名前と職種を1人だけ覚える
・ケアマネに「希望の職種」を遠慮なく伝える

「困りごと」を具体的な場面で伝える

「リハビリが必要そう」と漠然と伝えるより、「最近、お父さんが食事中に2〜3回むせるんですが」と場面を具体的に伝えるほうが、専門職側は動きやすくなります。ご家族は「正確に分類する」必要はなく、「何が気になっているか」を話すだけで十分です。

担当者の名前と職種を1人だけ覚える

3人の名前を覚えなくて大丈夫です。まず1人、名前と役職(「理学療法士の〇〇さん」)を覚えて顔をつないでおくと、次の面会で話しかけやすくなります。「あの先生に聞いてみよう」と思える相手が1人いるだけで、ずいぶん違います。

ケアマネジャーに「希望の専門職」を伝える

在宅でリハビリを始める際、「言語聴覚士に診てもらいたい」「作業療法士に自宅を見てほしい」と希望を伝えると、対応できる事業所を探してもらいやすくなります。ケアマネジャーは、そういった専門的な要望に応えることも仕事のうちです。

ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ

「何を聞けばいいか分からなかった」というKさんの言葉が、ずっと残っています。

「誰に何を聞けばいいか」さえ分かれば、その一歩を踏み出せます。情報は、こちらから取りに行かないと流れていってしまうことが、現場ではよく起きます。

PT(理学療法士)は 歩く・立つ
OT(作業療法士)は 食事・着替え
ST(言語聴覚士)は 飲み込み・ことば

次の面会のとき、ポケットにそっとしまっておいてください。

珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。メガネ

次の行動|次の面会・通所日にできること

難しく考えなくて大丈夫です。3つのうち、1つだけ試してみてください。

・担当リハビリスタッフの名前と職種を1人確認する
・「最近気になっていること」を1つ専門職に伝えてみる
・ケアマネジャーに「どの職種に相談すればいいか」聞いてみる

出典・参考

  • 厚生労働省「理学療法士及び作業療法士法」(昭和40年法律第137号)
  • 厚生労働省「言語聴覚士法」(平成9年法律第132号)
  • 公益社団法人 日本理学療法士協会「理学療法士とは」
  • 一般社団法人 日本作業療法士協会「作業療法とは」
  • 一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士とは」
  • 厚生労働省「介護保険制度の概要」(2024年度版)

最終確認日:2026年5月

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この記事を書いた人

メガネのアバター メガネ 理学療法士、社会福祉士、ケアマネ

PT(理学療法士)×社会福祉士×ケアマネジャーの三刀流。
介護の現場で感じたことを珈琲一杯分ずつ率直に届けます。
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