「入院中、退院支援看護師さんと、医療ソーシャルワーカー(MSW)さん、両方から声をかけられたんですが……どっちに何を相談していいか分からなくて」
家族からよく聞きます。
結論からお伝えします。両方とも退院後の生活を支える専門職ですが、得意分野が違います。
・退院支援看護師:医療・看護の視点で、退院後の療養を整える
・社会福祉士(MSW):制度・お金・家族関係の視点で、生活を整える
両方に遠慮なく相談してOKです。むしろ、家族から声をかけてもらえる方が、両者ともスムーズに動けます。
私は理学療法士・社会福祉士として現場で18年、いまは施設の相談員として、入院中・退院後の家族支援にも関わっています。今日はその経験から、両者の違いと、家族がどう使い分ければいいかを整理します。
Zさんの話——「2人いて、どちらに頼めばいいか分からなかった」
Zさん(仮名)の70代のお父さまが脳梗塞で入院。退院前に看護師から「退院支援看護師の◯◯です」、その翌日に別の方から「医療ソーシャルワーカーの△△です」と挨拶されました。
「2人とも退院の話をするんですけど、何を誰に頼んでいいか……」とZさん。
私はその場で、こうお伝えしました。
「医療的なこと(在宅での医療処置、訪問看護、薬の管理など)は退院支援看護師さんに。介護保険の申請、経済的な相談、家族の悩み、施設選びはMSWさんに。両方に同じ話をしても問題ないので、まず両方に話してみてください」
Zさんは両方と面談を重ね、退院後は訪問看護・訪問介護・福祉用具レンタルが連携した形で在宅介護がスタート。「両方使ってよかった」とのことでした。
それぞれの役割——何が違うのか

退院支援看護師とは
退院支援看護師は、看護師資格を持つ医療職です。退院後も医療的なケアが続く方の、在宅・施設での療養を整える役割を担います。
得意な相談:
・退院後の医療処置の調整(点滴・カテーテル・経管栄養など)
・訪問看護の必要性の見極めと手配
・かかりつけ医・往診医との連携
・薬の管理方法のアドバイス
・本人・家族への療養指導
社会福祉士(MSW)とは
医療ソーシャルワーカー(MSW)は、社会福祉士などの資格を持つ福祉職です。退院後の生活全体を整える役割を担います。
得意な相談:
・介護保険の申請手続き ・経済的な相談(医療費・介護費・公的制度)
・家族関係の調整(誰が世話する、お金の分担など)
・施設選びの支援(特養・有料・サ高住など)
・退院後のケアマネ紹介
両者の違いを表で整理する
| 項目 | 退院支援看護師 | 社会福祉士(MSW) |
|---|---|---|
| 資格 | 看護師 | 社会福祉士・精神保健福祉士など |
| 視点 | 医療・看護 | 生活・福祉・制度 |
| 主な相談 | 医療処置・訪問看護・薬 | 介護保険・経済・家族・施設 |
| いる場所 | 病棟・退院支援室 | 医療相談室・地域連携室 |
| 連携先 | 訪問看護・かかりつけ医 | ケアマネ・地域包括支援センター |
両者は院内で連携しながら、家族と本人を一緒に支えます。重なる部分もありますが、家族が「どっちに頼むか」を悩む必要はありません。
入院から退院までのタイムライン——いつ・誰に相談する?
家族が「いつ動けばいいか」を迷わないよう、入院から退院までの流れを整理します。
入院直後(1〜3日目)
・担当医・担当看護師の名前を確認する ・退院支援看護師・MSWの名前と連絡先をメモする
・「退院後は自宅を希望しています」など、大まかな方向性を伝えておく
病院によっては、入院当日に退院支援看護師やMSWから声をかけてくれることもあります。声をかけられたら、遠慮せず話してみてください。
入院中(1〜2週間目)
・退院支援看護師に「退院後の医療的なケアについて教えてほしい」と相談する
・MSWに「介護保険の申請はどうすればいいか」「費用のことを相談したい」と伝える
・家族の中で「誰が窓口になるか」を決めておく
介護保険の認定には申請から約30〜60日かかります。退院が見えてきてから動き始めると間に合わないことがあるので、入院早期に動くのがポイントです。
退院1〜2週間前
・退院支援看護師と「在宅での医療処置の確認」「訪問看護の頻度」を詰める
・MSWと「退院後のサービス内容」「ケアマネへの引き継ぎ」を確認する
・退院前カンファレンス(関係者が集まる会議)に家族も参加する
退院前カンファレンスは、医師・看護師・退院支援看護師・MSW・ケアマネが一堂に集まる場です。「参加してもいいですか?」と一言伝えれば、ほぼ必ず参加できます。
退院当日・退院後
・在宅ケアマネジャーに引き継がれ、在宅サービスがスタートする ・困ったことがあれば、退院後もMSWや退院支援看護師に相談できる病院もある
家族からよくある質問
Q. 両方に同じことを話してもいい?
はい、問題ありません。同じ内容を両方に伝えることで、情報の共有がスムーズになります。 「さっきMSWさんにも話したんですが」と一言添えるだけで十分です。
Q. 退院支援看護師がいない病院もある?
小規模な病院では、退院支援を担当する専任の看護師がいない場合もあります。その場合は、担当看護師かMSWに「退院後の医療的なケアについて相談したい」と伝えると、適切な担当者につないでもらえます。
Q. MSWがいない病院は?
規模の小さいクリニックや診療所にはいないことがあります。その場合は、**地域包括支援センター(65歳以上の方の相談窓口、無料)**が相談先になります。「退院後の生活について相談したい」と電話一本でOKです。
Q. 施設に入る場合でも相談できる?
はい。施設入所を希望する場合も、MSWが中心になって動きます。特養・有料老人ホーム・老健・サ高住など、施設の種類や入居条件の整理から、申し込みの手続きまでMSWに相談できます。
家族はどう使い分ければいいか
ざっくりのルールはこれだけです。
・医療のこと(処置・訪問看護・薬)→ 退院支援看護師
・生活・お金・制度のこと(介護保険・施設・家族関係)→ MSW
・どちらか迷ったら、最初に話せる方にまず相談する
両者は院内で情報を共有しています。片方に話したことは、もう一方にも自然に伝わります。 家族が「相手を間違えた」と心配する必要はありません。
そして、現場で実際に使えるひと言をポケットに入れておいてください。
「退院後のことで相談したいのですが、退院支援の担当の方はどなたですか?」
この一言を、次の面会で使ってみてください。それだけで、動きが一気に変わります。
ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ

退院支援看護師は「医療」、MSWは「生活・制度」を担当する。
どちらも遠慮せず、両方に相談していい。
入院中は時間が限られています。両方に挨拶して、両方の名前と連絡先をメモする——これが家族の最初の動きです。
次の行動|次の面会でできること
・退院支援看護師さんとMSWさん、両方の名前を確認する ・気になることを1つずつそれぞれに伝えてみる ・退院日のおおよその目安を、どちらかに聞いておく
3つのうち1つだけでいいです。退院後の生活が、ずいぶん見通しやすくなります。
このブログでは、こうした「家族が動くための具体的な手順」を、これからもひとつずつ書いていきます。関連記事として、以下もよかったらどうぞ。




珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。
メガネ
出典・参考
- 厚生労働省「退院支援・退院調整」
https://www.mhlw.go.jp/ - 公益社団法人 日本看護協会「退院支援」
https://www.nurse.or.jp/ - 公益社団法人 日本医療ソーシャルワーカー協会
https://www.jaswhs.or.jp/ - 公益社団法人 日本社会福祉士会
https://www.jacsw.or.jp/
※退院支援の体制は病院により異なります。具体的な相談は、入院先の医療相談室または地域連携室にお問い合わせください。
最終更新日:2026年5月









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