「親の介護で、仕事を辞めようかなと思って」
家族から相談を受けるなかで、本当によく聞く言葉です。
ですが私は、その時いつも同じことをお伝えします。「辞める前に、使える制度を全部見てからにしてください」。
私は理学療法士・社会福祉士として介護保険の現場で18年、いまは施設の相談員として、介護と仕事の両立に悩む家族の相談を毎日受けています。今日はその経験から、仕事を辞める前に必ず知っておきたい4つの制度を整理します。
結論からお伝えします。
- 介護休業:最大93日まで休める(給付金つき)
- 介護休暇:年5〜10日、必要な日だけ取れる
- 介護休業給付金:雇用保険から、賃金の67%
- 勤務時間の短縮など:時短勤務、残業免除など
これらを組み合わせれば、辞めずに介護を続けられるケースが圧倒的に増えます。

介護休業と介護休暇は、別の制度
家族からよく混同されますが、この2つはまったく別の制度です。
| 項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 期間 | 対象家族1人につき通算93日 | 対象家族1人で年5日/2人以上で年10日 |
| 取得単位 | 1日単位(3回まで分割可) | 1日単位または時間単位 |
| 給付金 | あり(賃金の67%) | なし(無給が一般的) |
| 主な用途 | 長期の介護体制を整える時間 | 通院付き添い・短時間の対応 |
| 申請先 | 会社(給付金はハローワーク経由) | 会社 |
ポイントは、両方とも「介護のために休める権利」が法律で守られていること。「うちの会社にそんな制度ない」と思う家族も多いのですが、育児・介護休業法はすべての事業主に適用されるので、原則としてどの会社でも使えます。
ある家族の話
Hさん(仮名)は40代の働く女性で、80代のお母さまが脳梗塞で倒れ、退院後の生活を整える必要が出てきました。
「会社を辞めて、自宅介護に専念しようかと思って」と相談に来られたHさん。私はその場でこう聞きました。
「辞める前に、会社の人事に介護休業のことを聞いてみてください。最大93日休めて、その間は雇用保険から**賃金の67%**が給付金として出ます」
Hさんはぽかんとしていました。「そんな制度、聞いたことがなかったです……」
結果、Hさんは介護休業を取得し、その93日でケアマネを決め、訪問介護とデイサービスの体制を整えました。職場復帰後は、短時間勤務制度を使いながら、現在も働き続けています。
「辞めなくてよかった」とHさんが後から言ってくれた言葉が、印象的でした。
介護離職は、家計にも、家族の関係にも、本人の人生にも大きな影響を残します。辞める前に、制度を全部見る——これが鉄則です。
仕事を辞める前に使える4つの制度
① 介護休業(最大93日・給付金あり)
最大の制度です。対象家族1人につき、通算93日まで休めます。3回まで分割できるので、状況に応じて使い分けられます。
使いどころ:
- 退院直後の体制整備(ケアマネ決定、サービス開始まで)
- 施設入所の手続き期間
- 看取りの時期
申請:会社に申し出て、介護休業給付金はハローワークで申請。
② 介護休暇(年5〜10日・1日/時間単位)
短い対応に使う制度です。対象家族1人で年5日、2人以上で年10日。1日単位だけでなく、時間単位でも取得可能(2021年の改正で対応)。
使いどころ:
- 通院の付き添い(半日)
- ケアマネとの担当者会議(1〜2時間)
- 突発的な体調不良への対応
申請:会社に申し出るだけ(事前申請が原則ですが、当日でも可)。
③ 介護休業給付金(賃金の67%)
介護休業を取得した時に、雇用保険から支給される給付金です。
- 給付額:休業前賃金の67%
- 上限:1ヶ月あたり約34万円前後(毎年改定)
- 受給条件:雇用保険に加入していて、一定の勤続期間がある
申請:ハローワークに、会社経由で書類を提出。
④ 勤務時間の短縮など(時短勤務・残業免除)
復帰後も、短時間勤務・残業免除・深夜業の制限などの制度が使えます。少なくとも介護開始から3年間で2回以上、これらの措置が取れることが法律で定められています。
使いどころ:
- フルタイム復帰がまだ難しい時期
- 通院や緊急対応が頻繁にある時期
申請:会社に申し出る。
ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ
最後に、今夜あなたのポケットに入れて帰っていただきたいひとつだけ、お渡しします。

介護で仕事を辞める前に、まず会社の人事に「介護休業」を聞いてみる。 制度を使えば、辞めずに介護を続けられるケースが圧倒的に多い。
会社の人事に聞きづらい場合は、ハローワークにも相談窓口があります。電話一本で、自分が使える制度を整理できます。
「介護のために仕事を辞める」という選択は、全部の制度を見てからにしてください。辞めてからでは取り戻せないものが、思った以上に多いからです。


このブログでは、こうした「家族が動くための具体的な手順」を、これからもひとつずつ書いていきます。
珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。
メガネ
出典・参考
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115525.html
- 厚生労働省「介護休業給付」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html
- 厚生労働省「仕事と介護の両立支援」
- ハローワーク「介護休業給付金支給申請の手引き」
※介護休業・介護休暇の詳細条件、給付金の計算式・上限額は、法改正や年度改定で変わることがあります。 各制度の詳細は、お勤めの会社の人事部、または最寄りのハローワークで必ずご確認ください。
最終更新日:2026年5月








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