老人保健施設から施設へ——在宅に戻れないとき、次の場所の探し方

老健から次の施設(特養・有料老人ホーム)への移行の流れを示した図

「そろそろ次の施設を探し始めてください」——老健(老人保健施設)の相談員から、そう言われたことはありますか?

老健は「在宅復帰」を目的とした施設です。リハビリを行いながら、自宅に戻ることを目指す。でも状態によっては在宅に戻ることが難しく、次の施設を探す必要が出てくることがあります。そのとき、「どこに、どう動けばいいのか」を知らないと、判断が遅れます。

老健の在所期間には目安があります。状態が落ち着いてきた段階で「次の場所」を探すよう促されることが多い。そのタイミングは突然来ることもある。あわてないために、流れを知っておくことが大切です。

特養(特別養護老人ホーム)は、申し込みから入居まで数か月〜数年かかることがあります。老健に入所したその日から、次の選択肢を「いつでも動けるように」準備しておくことが、一番余裕のある動き方です。

私は老健の施設相談員として、また地域でのケアマネジャーとして18年、老健から次の施設へ移行する家族を何度も支援してきました。今日はその経験から、流れと準備のポイントを正直にお伝えします。

目次

Tさんの話——「次の施設を探してください」と言われて

Tさん(仮名・56歳)のお父さん(82歳)が、転倒による骨折で入院。その後リハビリのために老健に入所して3か月が経ちました。

ある日、老健の相談員から連絡がありました。「お父様の状態が落ち着いてきたので、次の施設を一緒に考えていきたいと思っています」。Tさんは「もう少しいられると思っていた」と驚きました。

「在宅に戻るのは難しいのでしょうか?」と聞くと、「自宅では夜間の見守りが難しい状態です。施設でのケアが安心だと思います」と言われました。そこから、Tさんは初めて「次の施設を探す」という現実に向き合い始めました。

「老健がゴールではなかった」——Tさんがそう気づいたのが、入所から3か月後のことでした。

老健は「通過点」——在所期間の目安を知っておく

老健(老人保健施設)は、病院から退院した後、自宅に戻るためのリハビリを行う施設です。「自宅に帰る前の中継地点」というイメージが近い。長期入所を前提とした施設ではないため、状態が落ち着いてくると「次の場所」を検討するよう促されます。

在所期間に法律上の上限はありませんが、目安として3〜6か月と言われることが多いです。施設によって方針が異なり、長期間在所できる老健もあります。担当の相談員に「うちの施設の目安はどのくらいですか?」と早めに確認しておくことが重要です。

「まだいられると思っていた」という声は現場でよく聞きます。老健に入所したタイミングで「次の場所」について考え始めることが、余裕ある準備につながります。

【相談員への一言】
「老健には平均どのくらい入所できますか?次の施設はいつ頃から探せばいいですか?」

老健は通過点——次の場所を早めに考えておくことが大切

在宅に戻れないとき——次の選択肢は何があるか

老健から「在宅に戻ることが難しい」と判断された場合、主に以下の選択肢があります。

・特養(特別養護老人ホーム):要介護3以上が対象。費用が比較的抑えられる。待機期間が長いことが多い
・介護付き有料老人ホーム:費用は高め。比較的空きがあることが多く、入居までが早い
・グループホーム:認知症の方向け。少人数のアットホームな環境。認知症が中等度まで
・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住):自立〜軽度向け。介護サービスは別途手配
・再び老健(別の老健):状態によっては他の老健への移行も選択肢になる

最も重要なのは今の要介護度と、医療的ケアの必要性です。胃ろう・気管切開・点滴など医療処置がある場合、受け入れできない施設もあります。老健の相談員に「医療的ケアの状況を踏まえて、どの施設が現実的か」を相談することが第一歩です。

老健から次の施設へ——移行までの流れ

老健から次の施設に移るまでの流れは、おおよそ以下のとおりです。

・老健の相談員に「次の施設を探したい」と相談する(在所中がベスト)
・本人・家族で「在宅か施設か」「費用の目安」「エリア」を確認する
・特養を希望する場合、老健在所中に複数の施設へ申し込みを済ませる
・有料老人ホーム・グループホームは見学して空き状況を確認する
・入居先が決まったら、老健→新施設へのサマリー(申し送り文書)を依頼する

特養の申し込みは「入所を希望する施設」に直接申し込む形式です。ケアマネジャーに「近隣の特養のリスト」を出してもらい、複数に申し込んでおくことが一般的です。待機期間中に他の施設(有料など)に入居し、特養の順番が来たら移る、という流れも多く見られます。

特養は申し込んだからといって、すぐに入居できるわけではありません。順番は「申し込み順」ではなく、要介護度の重さ・在宅での困難さなどで判断されます。申し込みは早いほど有利ですが、「申し込みさえすれば安心」ではない点も知っておいてください。

【ケアマネへの一言】
「特養に申し込みたいのですが、近くの施設のリストをいただけますか?複数に申し込んでいいですか?」

老健の相談員を最大限に活用する

老健には必ず「社会福祉士」または「支援相談員」がいます。次の施設探しにおいて、この相談員は最大の味方です。

・地域の施設の空き状況や特徴を把握している
・医療的ケアがある場合でも、受け入れ可能な施設を知っている
・施設間のサマリー(申し送り)作成を担ってくれる
・見学の段取りや書類の準備を一緒に進めてくれる

遠慮せず「次の施設探し、一緒に進めてもらえますか?」と言ってください。それが相談員の仕事です。「何も言わずに待っていると動きが遅れる」——これが現場の実態です。能動的に動いた家族の方が、早く次の場所が決まります。

よくある質問

Q. 老健から特養に直接移ることはできますか?

できます。老健在所中に特養の申し込みをして、順番が回ってきた段階で移ることが最もスムーズな流れです。老健の相談員と特養の相談員が連携して申し送りを行います。ただし特養の入居審査では「在宅介護困難度」が重視されるため、「老健にいる=在宅困難ではない」とみなされるケースもあります。担当ケアマネに相談してください。

Q. 有料老人ホームは費用が高すぎて払えません。

費用は施設によって大きく異なります。月額8〜15万円程度から入れる介護付き有料老人ホームも存在します。「有料=高い」というイメージがありますが、地域・立地・サービス内容によって幅があります。ケアマネや老健の相談員に「予算の上限を伝えて」探してもらうことが近道です。

Q. 本人が「今の老健にいたい」と言っています。

気持ちはよく分かります。慣れた環境・スタッフへの安心感があるのは自然なことです。「老健は次の場所を探す期間のための施設」であることを、本人が分かりやすい言葉で説明することが大切です。老健のスタッフに「本人への説明をお願いできますか」と相談することも一つの方法です。

ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ

老健に入ったその日から、次の場所について考え始めることができます。

「まだ先のこと」と思わずに、老健の相談員に「次の施設について相談したい」と早めに一言伝えてください。その一言が、一番余裕のある動き出しになります。

次の行動|今日からできること

・老健の相談員に「在所期間の目安と、次の施設探しについて聞きたい」と伝える
・ケアマネジャーに「特養の申し込み先リストを出してほしい」と依頼する
・家族間で「費用・エリア・どんな施設を希望するか」を話し合う

3つのうち1つだけでいいです。動き始めることで、見えてくるものがあります。

関連記事として、以下もよかったらどうぞ。

メガネ

出典・参考

  • 厚生労働省「介護老人保健施設について」 https://www.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」 https://www.mhlw.go.jp/
  • 公益財団法人 長寿科学振興財団「介護サービスの種類と選び方」 https://www.tyojyu.or.jp/

※在所期間・費用・手続きは施設・地域によって異なります。担当のケアマネジャーまたは老健の相談員にご確認ください。
最終更新日:2026年6月

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

メガネのアバター メガネ 理学療法士、社会福祉士、ケアマネ

PT(理学療法士)×社会福祉士×ケアマネジャーの三刀流。
介護の現場で感じたことを珈琲一杯分ずつ率直に届けます。
コーヒー好き。

📝 note:介護の気づきや考えをゆるく投稿
🐧Xは介護のつぶやき、Blogとnoteの告知
☕ Instagram:珈琲アカウント
💬threads:ゆるく、つぶやいてます

メガネのURL・SNSのリンクまとめは下記にて
👇👇👇
megane-care.megane19851202.workers.dev

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次