「老健って、何をする場所?」——特養・有料との決定的な違い

「退院後に老健を勧めます」——病院の相談員からそう言われたとき、「老健って何ですか?」と聞き返した方は少なくないはずです。

特養という言葉は聞いたことがある。有料老人ホームも何となく分かる。でも老健は、名前だけ聞いてもイメージがつかみにくい施設です。

この記事では、老健(介護老人保健施設)が何をする場所なのかを、特養・有料老人ホームとの違いを交えながら解説します。現役の老健相談員として、正直に書きます。

目次

Iさんの話——「老健に入ってください、と言われても……」

Iさん(仮名・55歳)のお母さん(74歳)は、脳梗塞で入院して3週間が経っていました。リハビリ病棟への転棟も終わり、「そろそろ退院後の行き先を考えましょう」と病院スタッフから声がかかりました。

その中で「老健への入所を勧めます」という提案がありました。Iさんは困惑しました。「特養じゃダメなんですか?有料老人ホームとは違うんですか?」

老健の相談員として関わる中で、このような疑問を持つ家族に何度も出会ってきました。老健は「最終的な住まいを決める前に入る、リハビリの場所」というイメージが伝わりにくいのです。

老健とは——「在宅復帰を目指すリハビリ施設」

老健・特養・有料老人ホームの違いを比較したインフォグラフィック(目的・費用・期間)

老健(介護老人保健施設)は、病院を退院した後に自宅に戻るための準備をする施設です。最も大きな特徴は、リハビリに特化していることです。老健には医師・看護師・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が常駐し、入所者に毎日リハビリを提供します。

入所期間の目安は3〜6か月です。「家に帰れる状態になったら退所する」という通過型の施設であることが、特養・有料老人ホームとの最も大きな違いです。

特養との違い——「終身」か「通過」か

特養(特別養護老人ホーム)は、常時介護が必要な方が終身で入所する施設です。原則として要介護3以上が対象で、費用が比較的低めなため、待機者が数年に及ぶこともあります。

老健と特養の決定的な違いは「入所の目的」にあります。特養は「ここで最後まで生活する」場所ですが、老健は「在宅に戻るための準備をする」通過型の施設です。退院後すぐには自宅に帰れない状態でも、老健でリハビリを続けながら在宅復帰を目指せます。

有料老人ホームとの違い——「リハビリ体制」と「費用」

有料老人ホームは民間が運営する施設で、費用は月10〜30万円以上と幅広く、在宅復帰を目的としない「そこで暮らす」施設が多いです。

リハビリ体制は施設によって大きく差があります。老健のようにPT・OT・STが揃っている施設は少なく、機能訓練指導員が1名のみというケースも多いのが実態です。在宅復帰を目指すなら、老健の方が医療・リハビリ体制は手厚いと言えます。

3施設の比較表

特養・老健・有料老人ホームを一覧で比較しました。施設を選ぶときの参考にしてください。

項目老健特養有料老人ホーム
目的在宅復帰・リハビリ終身介護生活支援・終身
費用(月額目安)7〜15万円程度5〜13万円程度10〜30万円以上
リハビリ毎日(専門職配置)少ない施設によって差あり
入所期間3〜6か月(目安)終身終身
対象要介護1〜5原則要介護3以上要支援〜要介護
運営医療法人など社会福祉法人など民間企業

老健が向いている人・向いていない人

向いている人

・病院から退院したが、すぐには自宅に帰れない方
・リハビリを続けて在宅復帰を目指したい方
・短期間で集中的な専門リハビリを受けたい方
・在宅・施設の最終決定を検討する時間が必要な方

向いていない人

・終身入所の場所を探している方(特養を検討)
・認知症が進んでおり、環境変化への対応が難しい方
・費用を最優先に考えている方(特養の方が低額な場合が多い)

費用の目安

老健の月額費用は、要介護度・居室の種類・施設の地域によって異なります。おおよその目安は多床室(4〜6人部屋)で7〜10万円程度、ユニット型個室で12〜15万円程度です。

これに施設独自の加算費・日用品費などが加わる場合があります。また、所得に応じて上限が設定される「高額介護サービス費制度」が適用されるため、一定以上の費用は払い戻しを受けられることも覚えておいてください。

今日から動けること

・入院中の方:「退院後に老健という選択肢があります」と担当MSWや病棟スタッフに相談してみる
・老健を勧められた方:「在宅復帰を目指すリハビリ施設」として前向きに検討してみる
・施設選びで迷っている方:この記事の比較表を担当ケアマネに見せて相談してみる

老健は「通過する場所」です。でも、その通過の質が、その後の生活に大きく影響します。どんな施設かを知ることが、最初の一歩です。

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珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。メガネ

出典・参考

  • 厚生労働省「介護老人保健施設(老健)について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/roken/index.html
  • 一般社団法人全国老人保健施設協会「老健とは」https://www.roken.or.jp/
  • 厚生労働省「高額介護サービス費について」https://www.mhlw.go.jp/
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この記事を書いた人

メガネのアバター メガネ 理学療法士、社会福祉士、ケアマネ

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