【1分診断】親は在宅復帰できる?施設か家か迷ったら

老健からグループホームへ|認知症の親の「次の住まい」という選択肢

老健からグループホームへの移り先を、少人数の家庭的な暮らしのイメージで表したイラスト

「老健で、そろそろ次の場所をと言われてしまって……認知症のある父を、次はどこで暮らさせたらいいのでしょう」

老健(介護老人保健施設)でこう切り出されると、多くのご家族が言葉を失います。私も支援相談員として、その戸惑いのお顔を何度も見てきました。

そんなとき、次の住まいの候補になりやすいのがグループホーム(認知症対応型共同生活介護)です。認知症の診断がある人が、少人数で家庭的に暮らす場所です。

この記事では、老健からグループホームへ移るとはどういうことか、向いている人・向きにくい人、費用や入居の流れ、見学で見ておきたいことを、順番にお話しします。読み終わる頃には、「次の一手」が少し具体的になっているはずです。

目次

夜が不安だったお父さんと、まちこさんの選択

まちこさん(仮名・56歳)のお父さんは、脳梗塞後のリハビリのために老健に入所していました。日中は穏やかでしたが、夜になると「家に帰る」と廊下を歩き、眠れない日が続きました。

やがて相談員から「夜間の見守りが手厚い場所のほうが、お父さんも落ち着いて過ごせるかもしれません」と提案がありました。まちこさんは戸惑いました。「追い出されるのかな」と感じたそうです。

いくつか見学した中で選んだのが、9人が暮らすグループホームでした。台所からご飯の匂いがして、入居者が職員と一緒に洗濯物をたたんでいる。なじみの職員が少人数で関わる環境が、お父さんには合っていたようでした。

移って数週間後、夜歩く回数は少しずつ減っていきました。ただ、まちこさんは「移ればうまくいくと思っていたわけではなくて、たまたま相性が良かったのだと思います」と話します。環境が変わった直後は、かえって落ち着かなくなる方もいます。

大切なのは「移せば解決する」ではなく、「その人に合う暮らしの形を一緒に探す」という姿勢だと、私は感じています。

グループホームとは、どんな場所か

グループホームは、正式には「認知症対応型共同生活介護」といいます。かみくだくと、認知症の診断がある人が、少人数で助け合いながら暮らす住まいのことです。

ひとつの生活単位を「ユニット」と呼び、1ユニット5〜9人の少人数で構成されます。入居者は個室を持ちながら、食事や家事を職員と一緒に行い、家庭に近い暮らしを送ります。

もうひとつの特徴が「地域密着型」であることです。原則として、その市区町村に住民票がある人が対象になります。別の地域のホームには、原則として申し込めない点は、はじめに知っておくと戸惑いが減ります。

・認知症の診断がある人が対象(要支援2以上・要介護が目安)
・1ユニット5〜9人の少人数で、なじみの職員と暮らす
・地域密着型で、原則その市区町村の住民が対象

老健とグループホーム、環境がどう違うのか

老健は、在宅復帰を目指してリハビリをする場所です。医師が常勤し、看護体制も厚く、医療面の安心感があります。一方で、規模が大きく、職員も交代制で関わることが多いのが特徴です。

項目 老健(介護老人保健施設) グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
主な対象 在宅復帰を目指してリハビリする人 認知症の診断がある人(原則その市区町村の住民)
人数規模 数十人〜100人規模が多い 1ユニット5〜9人の少人数
医療体制 医師が常勤・看護体制が厚い 看護体制は手厚くない場合がある。医療が多い人は要相談
費用の目安 おおむね月8〜15万円前後(多床室〜個室で幅) おおむね月12〜18万円前後(家賃・食費・介護費など)
暮らしの雰囲気 リハビリ中心・在宅復帰を意識した生活 家庭的・役割のある暮らし・生活の連続性を重視

認知症のある人にとって、この「規模」と「関わる人の数」の違いが、暮らしやすさに影響することがあります。理由は主に3つあります。

①少人数で、覚える顔が少ない

大勢の職員が入れ替わる環境より、いつも同じ数人が関わる環境のほうが、認知症のある人は安心しやすいと言われます。

「この人は知っている」という感覚が、混乱を和らげることがあります。

②生活の連続性が保たれる

ご飯の匂い、洗濯物をたたむ手ざわり、季節の行事。こうした暮らしの積み重ねが続くことで、その人らしいリズムが保たれやすくなります。

生活の場そのものがケアになる、という考え方です。

③役割のある暮らしができる

野菜を洗う、テーブルを拭く、花に水をやる。小さな役割があることで、「自分にもできることがある」という手ごたえが生まれます。これが表情の穏やかさにつながる場面を、現場でよく見ます。

ただし、グループホームは万能ではありません。医療的なケアが多い方や、常時の看護が必要な方には、体制が合わない場合があります。この点は次でくわしくお話しします。

【相談員への一言】「うちの親は認知症があるのですが、少人数で落ち着いて暮らせる場所は候補になりますか?」と聞いてみてください。方向性が見えてきます。

向いている人・向きにくい人

グループホームは、どんな人にも合うわけではありません。相性の目安を整理しておきます。

向いているのは、歩ける・身の回りのことがある程度できる段階の方です。

認知症はあるけれど、日常生活に大きな医療的ケアは要らない、という状態が合いやすいと感じています。

一方で、たんの吸引や点滴といった医療的ケアが多い方、常時の看護が必要な方は、グループホームでは対応が難しい場合があります。入居後に医療の必要性が高まると、住み替えを検討することになるケースもあります。

・向きやすい:認知症があり、歩ける・身の回りのことがある程度できる方
・向きにくい:医療的ケアが多い方、常時の看護が必要な方
・要確認:入居後に医療が必要になったときの方針(看取り・退去)

費用の方向感

費用は地域や施設で幅がありますが、目安として月12〜18万円前後になることが多いようです。

内訳は、家賃・食費・光熱費といった生活費と、介護保険の自己負担分(原則1〜3割)に分かれます。

老健と比べると、家賃にあたる部分がかかるぶん、月額はやや高めになる傾向があります。金額は施設ごとに大きく違うので、見学時に「毎月おおよそいくらになりますか」と、内訳ごとに確認しておくと安心です。

申込みから入居までの流れ

大まかな流れは、次のようになります。地域密着型のため、住所の要件がある点は前もって押さえておきましょう。

・ケアマネや老健の相談員に「候補にしたい」と伝える
・住んでいる市区町村のグループホームを探す(原則その地域の住民が対象)
・見学・面談(本人の様子や状態を施設側が確認する)
・体験入居ができる施設もある(数日〜)
・空きがなければ待機になることもある
・契約・入居

空室状況によっては待機になることもあります。「決めてから探す」より「早めに候補を見ておく」ほうが、いざというとき慌てずにすみます。老健にいるうちから、ケアマネと一緒に情報を集めておくと動きやすくなります。

【市区町村の窓口で】「認知症の親が入れるグループホームの空き状況を知りたいのですが、どこに聞けばいいですか?」——地域包括支援センターが入口になります。

見学で確認したいこと

パンフレットではわからないことがあります。見学のときは、次の点を見てみてください。

まず、職員が入居者にどう声をかけているかです。急かさず、その人のペースに合わせているか。少人数だからこそ、関わり方の質がそのまま暮らしの質になります。

そして忘れずに聞いておきたいのが、「医療が必要になったとき、どうなりますか」という点です。看取りまで対応するのか、状態によっては住み替えをお願いすることになるのか。施設ごとに考え方が違います。

・職員の声かけ——急かさず、本人のペースに合っているか
・暮らしの様子——入居者に役割や居場所があるか
・医療が必要になったとき——看取りの対応か、住み替えになるのか
・費用の内訳——毎月おおよそいくらか、何が含まれるか

【見学時の一言】「もし体調が変わって医療が必要になったら、ここではどこまで対応してもらえますか?」——一番聞きにくいけれど、一番大切な質問です。

相談員の本音

「老健を出てください」と言われると、多くのご家族が「見放された」と感じます。でも現場の私たちは、たいてい「この方に合う場所はどこだろう」と一緒に悩んでいます。

グループホームは、認知症のある人が主役になれる暮らしを大事にしている場所です。とはいえ、相性やタイミング、医療の限界があるのも事実です。移れば落ち着く、とは言い切れません。

だからこそ、まちこさんのように「合う場所を一緒に探す」という気持ちで見てほしいのです。本人を「困った人」として動かすのではなく、「どこでなら穏やかに過ごせるか」を中心に考える。それが、結果として家族の後悔も減らすように感じています。

「次の住まい」を探すのは、追い出されることではなく、その人に合う暮らしを選び直すこと。私はそう考えています。

まとめ

・グループホームは認知症の診断がある人が5〜9人で家庭的に暮らす場所
・地域密着型で、原則その市区町村の住民が対象
・少人数・生活の連続性・役割のある暮らしが、認知症のある人に合う場合がある
・医療的ケアが多い人・常時の看護が必要な人は向きにくいことがある
・費用は月12〜18万円前後が目安。待機や体験入居、住所要件を早めに確認
・見学では職員の声かけと「医療が必要になったときの方針」を見る

珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。
メガネ

関連記事として、以下もよかったらどうぞ。

よくある質問

Q. グループホームには誰でも入れますか?

認知症の診断があることが前提で、要支援2以上または要介護の方が対象になります。また地域密着型のため、原則としてそのグループホームがある市区町村に住民票がある方が対象です。医療的ケアが多い方は対応が難しい場合があるので、事前の面談で確認するとよいでしょう。

Q. 老健からグループホームへ移ると、認知症は落ち着きますか?

少人数で生活の連続性が保たれる環境が合い、落ち着かれる方もいます。一方で、環境が変わった直後はかえって不安定になる方もいて、相性やタイミングによります。「移れば落ち着く」と決まっているわけではない、という前提で検討することをおすすめします。

Q. 入居後に医療が必要になったらどうなりますか?

施設によって考え方が異なります。看取りまで対応するところもあれば、状態によっては住み替えをお願いするところもあります。見学や契約の前に「医療が必要になったときの方針」を確認しておくと、あとで慌てずにすみます。

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出典・参考

  • 厚生労働省「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」(介護サービス関連情報)
  • 厚生労働省「地域密着型サービスの概要」(令和6年度介護報酬改定)
  • 介護サービス情報公表システム(kaigokensaku.mhlw.go.jp)

※対象要件・費用・サービス内容は令和6年度介護報酬改定時点の情報です。金額や運用は地域・施設で異なります。最新情報は担当ケアマネまたは市区町村にご確認ください。
最終更新日:2026年7月

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この記事を書いた人

メガネのアバター メガネ 理学療法士、社会福祉士、ケアマネ

メガネ|現役の支援相談員
理学療法士・社会福祉士・ケアマネジャーの3つの国家資格・公的資格を持ち、介護老人保健施設(老健)で支援相談員として勤務。
介護の現場歴18年。リハビリ職と相談職の両方の視点から、老健の入所相談・在宅復帰支援に日々携わっています。このブログでは、現場で実際に受けた相談をもとに、介護に直面したご家族が迷わないための情報を発信しています。

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