「老健の費用って、いくらかかるんですか?」——入所の相談をするとき、最初にこの質問が出てきます。
施設によって金額が違う。特養とも有料老人ホームとも仕組みが違う。何を見て比べればいいのか分からない。そういった声をよく聞きます。
先に結論を言います。老健の月額は、約8〜15万円が目安。この差を生み出しているのは、主に「部屋タイプ」と「減免制度の有無」です。
この記事では、老健の費用の仕組みと、費用を抑える3つの制度を整理します。施設を選ぶ前に、ぜひ確認してください。

費用の仕組みを「構造」から理解する
老健(介護老人保健施設)の費用は、大きく2つに分かれます。
1つ目は「介護サービス費」。国が全国一律の単位数で定めており、利用者の負担は1〜3割です。要介護度・施設タイプ・部屋タイプによって単位数が変わります。
2つ目は「居住費・食費・日常生活費」。これは実費です。国が基準費用額(目安)を示していますが、特に居住費は部屋タイプで大きく差が開きます。月額の差の大半は、この「居住費」——つまり部屋のタイプから来ています。
下の表と図で、構造をまとめています。
老健の費用は「国の基準」で決まっている
介護老人保健施設(老健)の料金は、厚生労働省が全国共通で定めた基準がベース。だから「高い・安い」には理由があります。
1費用は「2つ」に分かれる
月額のめやすは 約8〜15万円。入居一時金はありません。内訳は大きく次の2つです。
介護サービス費
国が「単位数」で全国一律に設定。1単位=10円が基本(地域で10〜11.40円)。利用者はこの1〜3割を負担します。居住費+食費+日常生活費
部屋代・食事代など。国が「基準費用額(めやす)」を示し、施設ごとに設定。部屋のタイプで大きく変わる部分です。2国が定める「基本報酬」(1日あたり単位)
部屋タイプ・要介護度・施設タイプで単位数が変わります。下は基本型の例(令和6年度改定)。
| 部屋タイプ(基本型) | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 従来型個室 | 717 | 763 | 828 | 883 | 932 |
| 多床室(相部屋) | 793 | 843 | 908 | 961 | 1,012 |
| ユニット型個室 | 802 | 848 | 913 | 968 | 1,018 |
※単位。リハビリ体制が手厚い「在宅強化型」はさらに高く、例:多床室・要介護3で1,014単位。1単位=約10円。
3国が定める「基準費用額」(居住費・食費)
居住費・食費のめやす(老健、令和6年8月〜)。個室ほど高く、多床室が最も安いのが基本構造です。
| 区分 | 1日あたり | 月額めやす(30日) |
|---|---|---|
| 食費 | 1,445円 | 約43,350円 |
| 居住費:多床室 | 437円 | 約13,110円 |
| 居住費:従来型個室 | 1,728円 | 約51,840円 |
| 居住費:ユニット型個室 | 2,066円 | 約61,980円 |
※食費の基準費用額は2026年8月から1,545円/日に改定予定。多床室は2025年8月から室料負担(月約8,000円)が上乗せ。
4「高い・安い」を決める6つの要素
※住民税非課税世帯などは「負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」で居住費・食費が軽減され、実質の支払いが下がります。
5月額のちがい(要介護3・基本型・1割負担の例)
※加算等を含む概算。実際は施設・地域・加算・負担割合で変動します。差の大半は「居住費(部屋タイプ)」から生まれます。
出典:厚生労働省 令和6年度・令和8年度 介護報酬改定/基準費用額(令和6年8月〜)。数値は概算のめやすです。
実費部分は「施設によって幅がある」——国の基準はあくまでめやす
ここまで紹介した基準費用額は、国が示した「めやす」です。実際の居住費・食費・日常生活費は、施設ごとに設定されており、同じ部屋タイプでも施設によって金額が変わります。
居住費——同じ多床室でも施設差がある
多床室の基準費用額は1日437円(月約13,110円)ですが、2025年8月以降は多床室に室料負担(月約8,000円)が上乗せされます。さらに施設によっては、設備や立地などを理由に独自の設定をしているケースもあります。
「多床室だから安い」と決めつけず、実際の金額を施設に直接確認してください。
食費——内容によって施設差が出る
食費の基準費用額は1日1,445円(2026年8月から1,545円)ですが、施設によっては食事の内容・形態(刻み食・ミキサー食など対応の手厚さ)によって差が生じます。また基準を下回る施設、上回る施設ともにあります。
日常生活費——施設ごとにもっとも差が大きい項目
日用品(ティッシュ・石鹸など)・理美容・レクリエーション費用などをまとめた「日常生活費」は、施設が独自に設定する完全な実費です。
・月0〜2万円程度と施設によって大きな差がある
・おむつ代が別途実費の施設と、込みの施設がある
・レクリエーション費・行事費が別途かかる場合もある
月額シミュレーションに「日常生活費:約1万円」と書きましたが、これはあくまで目安です。施設によっては月2万円を超えることもあります。入所前に必ず確認してください。

【施設への確認一言】「日常生活費の内訳と月の目安を教えてください。おむつ代は含まれていますか?」
費用を抑える3つの制度
① 負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)
住民税非課税世帯などに該当する方は、負担限度額認定により居住費・食費の自己負担が大幅に軽減されます。申請しないと自動的には適用されません。市区町村窓口またはケアマネに相談してください。
② 高額介護サービス費
高額介護サービス費は、同じ月に支払った介護サービス費の自己負担額が所得に応じた上限額を超えた場合、超えた分が後から払い戻される制度です。
一般的な世帯(住民税課税世帯)の上限は月44,400円、住民税非課税世帯は月24,600円です。
| 所得区分 | 月の上限額 |
|---|---|
| 現役並み所得者Ⅲ(年収約1,160万円〜) | 140,100円 |
| 現役並み所得者Ⅱ(年収約770万〜1,160万円) | 93,000円 |
| 現役並み所得者Ⅰ・一般(住民税課税世帯) | 44,400円 |
| 住民税非課税世帯 | 24,600円 |
| 老齢福祉年金受給者・生活保護受給者 | 15,000円 |
ただし、居住費・食費・日常生活費(実費部分)は対象外です。あくまで介護サービス費(1〜3割負担の部分)にのみ適用されます。
申請は市区町村窓口へ。一度申請すると、以降は自動で計算・振込されるケースが多いです。入所後に忘れずに申請してください。



【窓口への確認一言】「高額介護サービス費の申請をしたいのですが、手続きを教えてください」
③ 高額医療・高額介護合算療養費制度
医療保険と介護保険の自己負担を合算して年間上限額を超えた場合に払い戻しを受けられる制度もあります。医療費も重なっている場合は、ケアマネや市区町村に相談してみてください。
施設を選ぶ前に確認したい4つのこと
・月額の内訳と変動の可能性(加算・日常生活費の実態)
・部屋タイプの選択肢(多床室と個室で月4〜5万円以上変わる)
・実費部分(居住費・食費・日常生活費)の施設ごとの設定額
・負担限度額認定・高額介護サービス費の対象かどうか
「費用が高い=サービスが良い」とは限りません。入所前に請求書の見本を見せてもらうのが、もっとも確実な確認方法です。
まとめ
・老健の月額は約8〜15万円が目安(部屋タイプで大きく変わる)
・費用は「介護サービス費(保険)+居住費・食費・日常生活費(実費)」の2本立て
・実費部分は施設ごとに設定が異なり、特に日常生活費は差が大きい
・負担限度額認定で居住費・食費が軽減される(住民税非課税世帯等・要申請)
・高額介護サービス費で介護サービス費の自己負担に上限がかかる(要申請)
・居住費・食費・日常生活費は高額介護サービス費の対象外——実費は別に確認を



費用の不安は、数字を見ると意外とほぐれます。「高すぎて無理」と思う前に、3つの制度の対象かどうかをケアマネに確認してみてください。
珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。メガネ
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出典・参考
- 厚生労働省「令和6年度・令和8年度介護報酬改定について」
- 厚生労働省「基準費用額(令和6年8月〜)」
- 厚生労働省「高額介護サービス費について」
- 厚生労働省「特定入所者介護サービス費(補足給付)について」
※費用・上限額・基準費用額は地域・施設・所得状況により異なります。最新情報は担当ケアマネまたは市区町村にご確認ください。
最終更新日:2026年7月





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