「在宅か施設か」で迷う家族に、現役相談員が正直に答えます

在宅介護と施設入所の判断基準(3つの条件・3つのサイン)を整理した比較図

「在宅か施設か、どっちがいいんでしょう?」相談の場でいちばん多い、問いのひとつです。

「正解」はありません。でも、決め方」はあります。どちらが合うかは、本人の状態・介護する家族の状況・本人の希望の3つの組み合わせで変わります。「在宅か施設か」ではなく、「今の状態でどちらが合っているか」——この問いに置き換えることが、最初の一歩です。

なぜ「正解」がないかというと、在宅でうまくいく家族もあれば、施設に移って本人がいきいきとする場合もあるからです。同じ要介護2でも、家族構成・住環境・本人の性格・夜間の状態によって、合う選択がまったく変わります。

「在宅で頑張る」と決めていたのに、半年後に施設に移ることになった家族を何度も見てきました。逆に、「施設しかない」と思っていたのに、サービスを整えたら在宅で2年以上暮らせた方もいます。

私は理学療法士・社会福祉士・ケアマネジャーとして現場で18年、在宅介護と施設入所の両方に関わってきました。今日はその経験から、在宅で続けられる3つの条件と施設を考えるべき3つのサイン——判断基準を正直にお伝えします。

目次

Mさんの話——「施設に入れるのはかわいそう」と思っていた

Mさん(仮名・49歳)のお母さん(77歳)が、半年前から物忘れが目立つようになりました。受診したところ認知症と診断され、要介護1の認定が出ました。

「施設に入れるのはかわいそう」「本人も家がいいと言っている」——そう思って、Mさんは在宅介護を選びました。毎日実家に通い、仕事を時短に切り替え、夜中の電話にも対応し続けました。ある日ケアマネから「Mさん、顔色が悪いですよ」と言われ、「大丈夫です」と答えた夜に、一人で泣きました

翌月、グループホームへの入居を決めました。入居後1か月、お母さんはスタッフに「ここは居心地がいい」と話していました。Mさんが面会に行くと、「帰ってきたよ」と笑顔で迎えてくれました。

「施設に入れるのがかわいそう、と思っていたのは私だけだったかもしれない」——Mさんはそう話してくれました。

在宅介護で続けられる3つの条件

在宅介護がうまくいっている家族には、共通点があります。次の3つが揃っているかどうかを、まず確認してみてください。

・介護する家族の体力・時間的余裕がある(一人だけに集中しない体制になっている)
・夜間の安全が確保できている(見守り機器・訪問サービスで対応できている)
・本人が在宅を強く希望している(本人の意思は最大の「条件」)

この3つのうち1つでも崩れてきたとき、在宅継続が難しくなるサインが出始めます。特に夜間の安全確保は、在宅継続の可否を決める最大のポイントです。夜中に転倒・徘徊のリスクが高まってきたとき、家族だけでは対応しきれない場面が増えていきます。

【今すぐ使える一言】
「夜間の見守りはどうすればいいか、ケアマネさんに相談できますか?」

施設を考えるべき3つのサイン

「まだ在宅で頑張れる」と思っていても、気づかないうちに限界に近づいていることがあります。次の3つのサインが出てきたら、施設への移行を具体的に検討する時期です。

・夜間の介護・見守りが必要になってきた(ヘルパーでは対応できない時間帯が増えた)
・介護している家族が「限界かもしれない」と感じ始めた(これは大事なサイン)
・認知症の進行で、自宅での安全確保が難しくなってきた(徘徊・火の元・転倒リスク)

なかでも「家族の限界」は、最も見落とされやすいサインです。「もう少し頑張れる」と言い続けて、ある日突然動けなくなる家族を何度も見てきました。介護は長距離走です。家族が倒れては、本人も困ります。

【今すぐ使える一言】
「私、少し限界かもしれません。施設のことも話し合えますか?」

「どちらが正解か」より大切なこと

現場で18年、何百件もの家族に関わって気づいたことがあります。在宅か施設かで後悔した家族のほとんどは、「決断が遅かった」ではなく「一人で抱えすぎた」のです。

担当のケアマネジャーに「正直に言って、うちの親は在宅で大丈夫だと思いますか?」と聞いてみてください。プロの目から見た率直な意見が、判断の一番の助けになります。

施設に入れる=家族として失格」ではありません。Mさんのお母さんのように、施設に移ってから笑顔が増えることもある。本人が安心して暮らせる場所を選ぶこと——それが、介護における家族の役割だと思っています。

よくある質問

Q. 本人が「施設はいやだ」と言っています。

本人の意思は最大限尊重したいところです。ただ、現状のまま在宅で続けることが本人にとっても安全かどうかは、別に考える必要があります。「今より安心して過ごせる場所」として話してみることで、受け入れてもらえることもあります。担当のケアマネジャーに同席してもらって話し合うと、家族だけで話すより受け入れやすくなることがあります。

Q. 施設に入れたら、もう在宅には戻れませんか?

そんなことはありません。老健(介護老人保健施設)はもともと「在宅復帰」を目的とした施設です。グループホームやサ高住から在宅に戻った方もいます。「施設=永遠」ではありません。一時的に施設でケアを受けながら、在宅復帰を目指す選択肢もあります。

Q. 在宅と施設、費用はどちらが高いですか?

ケースによります。在宅介護は介護サービス費に加え、住宅改修・福祉用具レンタルの費用がかかります。一方、施設は月額が決まっているため費用が安定しやすいという面があります。所得によって自己負担が変わるため、担当のケアマネジャーに試算してもらうのが確実です。

ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ

「在宅か施設か」——どちらが正解かではなく、「今の状態と家族の状況で、どちらが合っているか」を問い直してみてください。

担当のケアマネジャーに「正直に言ってどう思いますか?」と聞くことから始められます。その一言が、一番の近道です。

次の行動|今日からできること

・ケアマネに「在宅か施設か、正直にどう思いますか?」と聞いてみる
・「施設に入れるのはかわいそう」という気持ちを、一度ケアマネに話してみる
・特養を希望する場合、状態が安定しているうちに「申し込みだけ」を済ませておく

3つのうち1つだけでいいです。判断の視点が、ぐっと変わります。

このブログでは、こうした「家族が動くための具体的な手順」を、これからもひとつずつ書いていきます。関連記事として、以下もよかったらどうぞ。

珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。メガネ

出典・参考

  • 厚生労働省「介護保険サービスについて」 https://www.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「認知症施策推進大綱」 https://www.mhlw.go.jp/

※費用・サービス内容は地域・事業所により異なります。個別の相談は担当のケアマネジャーまたは地域包括支援センターにお問い合わせください。
最終更新日:2026年6月

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この記事を書いた人

メガネのアバター メガネ 理学療法士、社会福祉士、ケアマネ

PT(理学療法士)×社会福祉士×ケアマネジャーの三刀流。
介護の現場で感じたことを珈琲一杯分ずつ率直に届けます。
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