【1分診断】親は在宅復帰できる?施設か家か迷ったら

老健の1日のスケジュール|親はここでどんな時間を過ごしているのか

老健の1日のスケジュール

「面会に行ったら、母は車いすで眠っていました。あの子、あそこで何をしているんでしょうか」

老健(介護老人保健施設)の支援相談員をしていると、ご家族からこの種の質問をよく受けます。パンフレットには「充実したリハビリ」と書いてあるけれど、親御さんの1日が具体的に想像できない。だから不安になる。とても自然なことだと思います。

結論から言うと、老健の1日は朝6時前から夜10時過ぎまで、ほぼ切れ目なく組み立てられています。

ただしその中には「休む時間」も意図的に組み込まれています。

この記事では、起床から夜間巡視までの流れを表にまとめ、リハビリや入浴の頻度、夜間の体制、そして面会に向いた時間帯まで、現場の実際をそのままお伝えします。

目次

「何もしていないのでは」——のりこさんが感じた不安

のりこさん(仮名・49歳)のお父さんは、脳梗塞のあと老健に入所しました。仕事のあいまを縫って、のりこさんは平日の午後1時半ごろに面会に来ていました。

けれど、行くたびにお父さんはベッドで眠っている。声をかけても、ぼんやりした返事しか返ってこない。3回続いたとき、のりこさんは相談員である私にこう言いました。「父は、ここで一日中寝ているんでしょうか」

記録を一緒に見ると、その日のお父さんは午前中に理学療法士と40分の歩行練習をし、昼食も完食していました。のりこさんが見ていたのは、1日の中でいちばん静かな1時間だけだったのです。

面会時間を午後3時に変えてもらうと、次の面会でお父さんはおやつを食べながら他の入所者と話していました。のりこさんは「はじめて父の生活が見えた気がします」と言いました。

この行き違いは、のりこさんが不注意だったから起きたのではありません。「1日の流れを誰も説明していなかった」という、こちら側の課題でもありました。

老健の1日のスケジュール(タイムライン)

施設によって前後30分ほどの差はありますが、多くの老健はおおむね次のような流れで動いています。3列目には「家族が知っておくとよいこと」を添えました。

時刻 施設での内容 家族が知っておくとよいこと
6:00 起床・おむつ交換 夜勤者が居室をまわる時間帯。早い人は6時前に目を覚ましています
7:00 整容・着替え・移乗 顔を拭く、髪をとかす、ズボンを上げる。ここも立派なリハビリの時間です
8:00 朝食・口腔ケア・朝の服薬 食事形態や薬の変更はこの時間の記録に残ります。面会は避けたい時間帯
9:30 健康チェック・入浴(週2回程度) 血圧・体温・排便の確認。入浴日は本人の予定がほぼ埋まります
10:00 個別リハビリ/集団体操 PT・OT・STによる20〜40分の個別訓練。面会は避けたい時間帯
11:30 昼食前の準備・トイレ誘導 食堂へ移動。歩行練習を兼ねて時間をかけて移動する人もいます
12:00 昼食・口腔ケア・昼の服薬 むせの有無をスタッフが確認。面会は避けたい時間帯
13:00 臥床休憩(お昼寝) 体を横にして体力を回復させる時間。面会で「寝ている」のはたいていここ
14:00 レクリエーション・個別リハビリ 歌・体操・書道・カレンダー作りなど。面会しやすい時間帯
15:00 おやつ・水分補給 脱水予防のための水分チェックが入ります。面会しやすい時間帯
16:00 自由時間・談話・整容 テレビ、新聞、他の入所者との会話。いちばん落ち着いて話せる時間
18:00 夕食・口腔ケア・夕の服薬 1日でスタッフがもっとも忙しい時間帯のひとつ
19:00 更衣・トイレ誘導・就寝準備 日勤から夜勤への申し送りが行われます
20:00 消灯・就寝 テレビを消し、居室の照明を落とします
22:00〜 夜間巡視(2時間ごと程度) 体位変換・おむつ交換・呼吸の確認。日中よりスタッフは少人数です

こうして並べてみると、思ったより予定が詰まっていると感じる方が多いようです。同時に、13時台のように意図的に静かな時間も置かれています。

スケジュールの中で、家族が特に気になる4つのこと

① リハビリは午前中が中心

老健では週2回以上のリハビリが基本とされ、在宅復帰に力を入れる施設では週3回以上の個別リハビリが組まれることもあります。担当するのはPT(理学療法士=立つ・歩く)、OT(作業療法士=着替えや食事などの生活動作)、ST(言語聴覚士=話す・飲み込む)です。

個別リハビリの時間はおおむね20〜40分。午前中に集中しやすいのは、体力が保たれている時間帯だからです。午後にも個別リハビリは入りますが、午前に比べると枠は少なめの施設が多い印象があります。

② 入浴は週2回程度が一般的

「家では毎日入っていたのに」と驚かれることがあります。老健の入浴は週2回程度が一つの目安です。少なく感じるかもしれませんが、入浴日以外は清拭(せいしき=温かいタオルで体を拭くケア)や部分浴で清潔を保っています。

介助の必要度に応じて、一般浴・機械浴・リフト浴を使い分けます。

入浴日は本人の予定がほぼ埋まるため、その時間帯の面会はすれ違いになりやすいので、曜日と時間を事前に聞いておくと安心です。

③ レクリエーションは「暇つぶし」ではない

歌、体操、書道、季節の飾り作り。一見のんびりして見えますが、これらは手指を動かす、声を出す、人と関わるという明確な目的を持って組まれています。

認知機能の維持や、生活リズムを整える役割もあります。参加は強制ではありませんので、「うちの親は人前が苦手で」という場合は、その旨をスタッフに伝えておくと個別の過ごし方を考えてもらえます。

④ 食事は一人ひとり形が違う

食堂に並ぶ食事は、同じメニューでも形が違います。常食、一口大、きざみ、ソフト食、ミキサー食。飲み込む力に合わせて、管理栄養士とSTが相談しながら決めています。

とろみをつけた水分を出している方もいます。面会時に持参した飲み物やお菓子が、本人の飲み込みに合わないことがあるため、差し入れの前に一声かけていただけると助かります。

【面会前の一言】「差し入れを持ってきたのですが、いま食べられる形でしょうか?」——このひと言だけで、誤嚥のリスクをかなり減らせます。

夜の老健は、日中とは別の顔をしている

ここは正直にお伝えしたい部分です。

夜間の職員体制は、日中より確実に手薄になります。日中は看護師・介護職・リハビリ職・相談員が動いていますが、夜間は1フロアを少人数の夜勤者で見る体制になるのが一般的です。

その中で、夜勤者はおおむね2時間ごとの巡視を行います。呼吸の確認、体位変換(床ずれ予防のために体の向きを変えること)、おむつ交換、ナースコールへの対応。夜も止まっているわけではありません。

それでも、日中と同じ密度の見守りが夜間もあると考えるのは現実的ではありません。転倒のリスクがゼロにならないのは、この時間帯です。だからこそ、夜間にどんな体制を取っているかは、見学時に聞いておく価値があります。

・夜勤者が1フロアに何人いるかを確認する
・看護師が夜間も常駐しているか、オンコール(自宅待機で呼び出し対応)かを確認する
・夜間に体調が変わったとき、家族への連絡はどの基準で行われるかを確認する

面会に行くなら、この時間帯

1日の流れがわかると、面会に向いた時間も見えてきます。

避けたいのは、リハビリ中・入浴中・食事中の3つ。どれも本人にとって大事な時間で、途中で抜けると再開が難しくなります。13時台のお昼寝も、体力回復のための時間です。

反対に14時から16時ごろは、レクリエーションやおやつ、自由時間が中心で、本人が起きていて、しかも比較的落ち着いています。私が家族に時間を聞かれたとき、いちばんよくお勧めするのはこの帯です。

・午後2時〜4時ごろ——本人が起きていて、話しやすい
・レクリエーションの日に合わせる——参加している姿を見られる
・入浴日の午後——さっぱりした表情に会えることが多い
・担当の相談員やケアマネがいる平日日中——ついでに近況を聞ける

もう一つ。面会前に電話を1本入れておくと、その日のスケジュールを教えてもらえます。「今日は10時半からリハビリなので、11時半以降だとゆっくりお話しできます」といった案内ができるからです。

【電話での一言】「明日うかがおうと思うのですが、本人が起きていて落ち着いている時間はいつごろでしょうか」——スタッフはこの質問を歓迎します。

相談員の本音——ギャップは、両側から埋めるもの

ご家族から聞く感想は、だいたい二つに分かれます。「思ったより忙しそう」と「思ったより静か」。

前者は、朝の整容から夜の就寝準備まで予定が詰まっていることに驚いた方。後者は、廊下が静かで、皆さんが穏やかに座っている光景を見た方です。どちらも正しいのです。老健は、動く時間と休む時間をわざと交互に置いている場所だからです。

ただ、私たち施設側がその設計を説明しきれていないことがあります。1日の流れを紙で渡している施設もあれば、口頭だけの施設もある。結果として、のりこさんのように「うちの親は何もしていないのでは」と不安を抱えたまま帰るご家族が生まれてしまう。

もし説明を受けていなければ、遠慮なく聞いてください。「1日のスケジュール表はありますか」と聞かれて困る相談員はいません。むしろ、聞いてもらえるとこちらも安心します。

面会で見えるのは、親御さんの1日のうちのほんの一場面です。その一場面だけで判断しなくていい、と伝えたくてこの記事を書きました。

まとめ

・老健の1日は朝6時前から夜10時過ぎまで、動く時間と休む時間が交互に組まれている
・個別リハビリは20〜40分・午前中が中心。入浴は週2回程度が一つの目安
・レクリエーションは暇つぶしではなく、機能維持と生活リズムのために行われている
・食事の形態は一人ひとり違う。差し入れの前に一声かけると安心
・夜間は日中より職員が手薄になる。2時間ごとの巡視体制などを見学時に確認しておく
・面会は午後2時〜4時ごろが狙い目。リハビリ中・入浴中・食事中は避ける

珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。
メガネ

関連記事として、以下もよかったらどうぞ。

よくある質問

Q. 老健の面会は何時から何時までできますか?

施設によって異なりますが、日中の時間帯(おおむね10時〜17時)を面会可能としているところが多いです。その中でも本人が起きていて落ち着いているのは午後2時〜4時ごろ。リハビリ中・入浴中・食事中は避けると、ゆっくり話せます。事前に電話でその日の予定を聞いておくと確実です。

Q. 老健のお風呂は週に何回入れますか?

週2回程度が一つの目安です。入浴日以外は清拭や部分浴で清潔を保っています。回数を増やしたい希望がある場合は、担当のケアマネや相談員に相談してみるという選択肢もあります。

Q. 面会に行くといつも寝ています。大丈夫でしょうか?

13時台は臥床休憩(お昼寝)の時間にあたるため、この時間帯の面会では眠っていることが多くあります。午前中にリハビリを行った後で疲れている場合もあります。心配なときは、その日の活動記録を見せてもらうと様子がわかります。

出典・参考

  • 厚生労働省「介護老人保健施設の人員・設備及び運営に関する基準」
  • 厚生労働省「介護老人保健施設の基本報酬及び加算について」(令和6年度介護報酬改定)
  • 介護サービス情報公表システム(kaigokensaku.mhlw.go.jp)

※本記事のスケジュールは一般的な老健の例であり、施設ごとに時間帯や回数は異なります。制度・基準は令和6年度介護報酬改定時点の情報です。詳細は入所先の施設または担当ケアマネにご確認ください。
最終更新日:2026年9月

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この記事を書いた人

メガネのアバター メガネ 理学療法士、社会福祉士、ケアマネ

メガネ|現役の支援相談員
理学療法士・社会福祉士・ケアマネジャーの3つの国家資格・公的資格を持ち、介護老人保健施設(老健)で支援相談員として勤務。
介護の現場歴18年。リハビリ職と相談職の両方の視点から、老健の入所相談・在宅復帰支援に日々携わっています。このブログでは、現場で実際に受けた相談をもとに、介護に直面したご家族が迷わないための情報を発信しています。

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