「来週退院です」——病院でそう言われて、慌てて老健を探し始めた。
支援相談員として、こうしたご家族からの電話を、私は毎週のように受けています。そして最初に聞かれるのは、だいたい同じ質問です。「申し込んだら、いつ入れますか?」
正直にお答えすると、答えは「早ければ10日ほど、待つときは数か月」と幅があります。同じ老健でも、タイミングによってここまで変わります。
この記事では、申込みから入所までの流れを6つのステップに分けて時系列で整理し、早いケースと遅いケースで何が違うのかをお伝えします。読み終わる頃には、「今わが家がどの段階にいて、あとどのくらいかかりそうか」が見えてくるはずです。
「来週退院」と言われた金曜日——ひろみさんの10日間
ひろみさん(仮名・49歳)のお父さんは、圧迫骨折で3週間入院していました。金曜日の夕方、病棟の看護師さんから「来週末には退院になりそうです」と伝えられます。
自宅は2階建てで、お父さんの寝室は2階。すぐに連れて帰るのは難しいと感じたひろみさんは、その日のうちに病院の医療ソーシャルワーカー(MSW=医療機関で相談を担当する職員)に相談しました。この「その日のうちに」が、結果的に大きく効きました。
翌週の月曜、MSWから紹介された老健3か所に電話。うち1か所に空きがあり、火曜に申込書を提出。主治医の診療情報提供書(=医学的な状態をまとめた紹介状)が水曜に出て、木曜に施設の相談員が病室まで面談に来ました。
金曜の判定会議で受け入れが決まり、翌週の火曜に入所。相談から数えて10日間でした。ひろみさんは後に「動くのが1週間遅れていたら、たぶん間に合わなかった」と話していました。
申込みから入所までの6ステップ
老健の入所は、施設が単独で「はい、どうぞ」と決めるものではありません。医師・看護師・リハビリ職・相談員が集まる判定会議を経て決まります。全体の流れを表にまとめました。

| STEP | やること | 誰が動く | 目安の日数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 相談・空き状況の確認 | 家族/病院のMSW/ケアマネ | 当日〜2日 |
| 2 | 申込書・書類の提出 | 家族+主治医(診療情報提供書) | 2日〜2週間 |
| 3 | 事前面談(本人の状態確認) | 施設の相談員・看護師 | 1日〜1週間 |
| 4 | 施設内の判定会議 | 医師・看護・リハ・相談員 | 週1回開催が多い |
| 5 | 入所日の決定・連絡 | 施設の相談員 → 家族 | 会議の1〜3日後 |
| 6 | 契約・入所 | 家族+施設 | 決定から数日 |
| 合計(ベッドが空いている場合) | 最短10日〜2週間 | ||
| 合計(空き待ちがある場合) | 数週間〜数か月 | ||
日数はあくまで現場での目安です。施設の規模や地域によって前後します。
STEP1〜2|相談と書類の提出
入院中であれば病院のMSW、在宅ならケアマネジャーが窓口になることが多いです。家族が直接施設に電話しても問題ありません。
このとき提出する書類でいちばん時間がかかるのが診療情報提供書です。主治医に依頼してから発行まで、1〜2週間かかる病院も珍しくありません。ここが全体のスピードを左右します。
・申込書(施設の様式)
・診療情報提供書(主治医が作成・ここが最も時間がかかる)
・介護保険被保険者証・健康保険証のコピー
・看護サマリー(入院中の場合・病棟が作成)

【相談員に一言】「老健入所を希望したいので、主治医に診療情報提供書の依頼をお願いできますか。



診療情報提供書は、老人保健施設の入所の方向性が決まったら、早い段階で相談員が準備を進めている場合もあります。



病院の相談員から老人保健施設の情報収集をするようにしましょう。
料金設定、自宅からの距離、面会時間、評判などを聞くことをお勧めします。



他、施設のホームページやSNS投稿を確認しましょう。
数カ所を比較すると雰囲気が分かると思います。
STEP3〜4|面談と判定会議
施設の相談員や看護師が、病院や自宅に本人の様子を見に来ます。歩けるか、食事はどうか、医療的な処置はあるか。ここで受け入れの可否がおおむね見えてきます。
そのうえで判定会議にかけられます。多くの老健では週1回の開催です。つまり書類が会議の翌日に届くと、実質1週間待つことになります。この「会議待ち」は、家族からは見えにくい時間です。
STEP5〜6|入所日の決定と契約
判定後、相談員から家族に連絡が入り、入所日を調整します。契約と持ち物の説明があり、当日を迎えます。



持ち物リストは施設ごとに違い、名前つけを求められることも多いです。決定の連絡が来たら、この準備に数日みておくと落ち着いて動けます。
早いケースと遅いケース、何が違うのか
相談から入所まで10日で進む家族もいれば、3か月待つ家族もいます。差を生んでいるのは、主に3つです。
1|ベッドの空き状況
これがいちばん大きい要素です。老健は在宅復帰を目指す施設なので特養より入れ替わりはありますが、それでも人気の施設は待機が出ます。
「1か所だけ申し込んで待つ」と、空きが出るまで動けなくなります。
2|書類が揃うスピード
ベッドが空いていても、書類が揃わないと判定会議にかけられません。
退院日が決まった時点で主治医に診療情報提供書を依頼しておくと、ここでのロスがぐっと減ります。
3|要介護認定があるかどうか
老健を利用できるのは要介護1以上の方です。要支援や未申請の状態では、原則として入所できません。
ただし、認定の申請中でも相談や申込みの受付は可能な施設が多くあります。認定結果を待ってから動き始めると、そこで1か月ほど失うことになります。申請と施設探しは、同時に進めるという選択肢もあります。



【施設への一言】「今、要介護認定を申請中で結果待ちです。この段階でも相談や仮申込みはできますか?」
待ち時間を短くするために、家族ができる3つのこと
こちらで待ち時間をゼロにはできませんが、縮めることはできます。現場で「この家族は動きが早い」と感じるのは、次の3つをしている場合です。
・書類を先に動かす——退院日が見えた時点で診療情報提供書を依頼する
・複数施設に同時申込みする——3か所前後が現実的。断ってもペナルティはない
・MSWやケアマネと情報を共有する——空き情報は専門職のネットワークに集まる
複数申込みについて「失礼では」と気にされる方がいますが、現場ではごく一般的です。私たち相談員も、家族が他施設と並行して探していることを前提に動いています。
そしてもうひとつ。入所日が決まってから慌てて用意すると、間に合わないことがあります。持ち物の準備や、費用の支払い方法の確認は、待っている間に済ませておくと当日が楽になります。
相談員の本音
電話口で「いつ入れますか」と聞かれるたび、はっきりした日付をお伝えできないもどかしさがあります。ベッドの空きは、こちらにも読めないからです。
その代わりに私がお伝えしているのは、「今どの段階にいるか」です。書類待ちなのか、会議待ちなのか、空き待ちなのか。同じ「待ち」でも、意味がまったく違います。
段階がわかると、家族は次の手を打てます。書類待ちなら主治医に確認できる。空き待ちなら別の施設も見てみる。何も見えないまま待つ時間が、いちばん消耗すると感じています。



「あとどれくらいですか」より「今どの段階ですか」と聞いてもらえると、私たちも具体的にお答えできます。
まとめ
・申込みから入所までは6ステップ。ベッドが空いていれば最短10日〜2週間
・空き待ちがあると、数週間から数か月かかることもある
・最も時間がかかるのは診療情報提供書。退院日が見えたら早めに依頼を
・判定会議は週1回開催が多く、書類の提出日で1週間変わることがある
・老健の対象は要介護1以上。認定申請中でも相談できる施設が多い
・複数施設への同時申込みは一般的。3か所前後を目安に



珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。
メガネ
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よくある質問
Q. 老健の申込みから入所まで、どのくらいかかりますか?
ベッドに空きがあり書類が早く揃えば、最短で10日〜2週間ほどです。空き待ちがある場合は数週間から数か月かかることもあります。判定会議が週1回開催の施設が多いため、書類の提出日で1週間前後変わります。
Q. 要介護認定の結果が出ていなくても申し込めますか?
老健の利用対象は要介護1以上ですが、認定の申請中でも相談や申込みの受付に応じてくれる施設が多くあります。結果を待ってから動くと1か月ほどのロスになるため、申請と施設探しを同時に進める方法もあります。
Q. 複数の老健に同時に申し込んでもいいですか?
問題ありません。現場ではごく一般的で、3か所前後に同時申込みするご家族が多い印象です。入所を辞退しても不利になることはありません。病院のMSWやケアマネに相談すると、空き状況の情報が得やすくなります。
出典・参考
- 厚生労働省「介護老人保健施設」(介護サービス情報公表システム)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
- 厚生労働省「介護保険制度における要介護認定の仕組み」
※制度・日数の目安は令和6年度介護報酬改定時点の情報および現場での実感に基づくものです。実際の期間は施設・地域により異なります。最新情報は担当ケアマネまたは施設にご確認ください。
最終更新日:2026年7月





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