「親に歩行器を買おうかと、ホームセンターで見てきたんですが……」
家族から本当によく聞く相談です。
結論からお伝えします。親の歩行器は、買わずに介護保険でレンタルしてください。月数百円から借りられて、本人の状態が変わったらすぐ別のタイプに切り替えられます。買うと、合わなくなったときにまるごと無駄になります。
私は理学療法士として現場で18年、歩行器が必要な方の歩行と、家族の選び方を見てきました。いまは施設の相談員として、家族から**「歩行器、買ってもいい?」**という相談を毎日受けています。
今日はその経験から、家族が歩行器をレンタルで賢く使うための3タイプ別の選び方と、申請の流れを整理します。
ある家族の話
Lさん(仮名)は80代のお父さまのために、ホームセンターでシルバーカーを3万円で購入しました。「これで安心」と思っていたのですが、3ヶ月後にお父さまが脳梗塞で入院。退院後は、シルバーカーでは支えきれない状態になっていました。
「結局、買ったシルバーカーは使えなくなって、新しく歩行器が必要に……」とLさんは肩を落として相談に来られました。
私はその場で、介護保険のレンタルを提案しました。担当ケアマネさんに電話していただき、福祉用具相談員が訪問。お父さまの状態に合う車輪付き歩行器を、月約300円(自己負担1割)で借りられるようになりました。状態が変われば、また別のタイプに替えられます。
「最初からレンタルにすればよかった……」がLさんの後悔でした。
なぜ買わずにレンタルなのか——3つの理由
1. 本人の状態は、思った以上に早く変わる
歩行器が必要なくらいの方は、3ヶ月〜半年で状態が変わることが珍しくありません。買った歩行器が合わなくなった時、買い直しは家計の負担になります。レンタルなら、ケアマネ経由ですぐ別のタイプに切り替えられます。
2. 介護保険なら、月数百円〜千数百円
介護保険のレンタルなら、月の自己負担は約300〜1,500円(1割負担の場合)。シルバーカー1台買う3〜5万円で、3年以上レンタルできる計算です。
3. メンテナンス・交換が業者持ち
レンタルなら、故障やパーツの交換は業者が対応してくれます。買った場合は自分で修理に出すか、買い替えるかになります。
歩行器の3タイプ
歩行器は大きく3タイプに分かれます。本人の状態と用途で選びます。

1. 固定型歩行器(持ち上げ型)
杖だけでは支えきれない方向け。両手で持ち上げて前に置き、その中に歩み出る方式。屋内中心で、しっかり支えてくれます。
こんな方に:
バランスが大きく崩れている
杖では不安になってきた
屋内が主な活動範囲
2. 車輪付き歩行器(4輪・前輪式・後輪式)
歩行器に車輪が付いていて、持ち上げずに押して進めるタイプ。ブレーキも付いているので、坂道や止まりたい時も安全。
こんな方に:
屋内・屋外の両方で使いたい
持ち上げる体力が落ちてきた
座って休みたい場面が多い(座面付きモデルもあり)
3. シルバーカー(買い物カート型)
自立度が高めの方向け。荷物が入る、座れる、見た目が買い物カート風で「介護用品」っぽくない。
こんな方に:
まだ自分で歩ける
買い物の付き添いがメイン
ファッション感覚で持ちたい
※シルバーカーは介護保険レンタル対象外のモデルが多いため、購入になる場合もあります。担当ケアマネに確認を。
歩行器を選ぶ3つのポイント
ここからは、今夜から使える具体的な選び方です。
ポイント①|屋内 / 屋外、どちらで使うか
屋内中心なら固定型歩行器、屋外も使うなら車輪付き歩行器を選びます。「両方使いたい」場合は、車輪付きが万能。
ポイント②|ブレーキの操作性
車輪付き歩行器を選ぶときは、ブレーキが本人の握力で操作できるかを確認。手の力が弱い方には、握り込むだけでブレーキがかかるタイプが安全です。
ポイント③|持ち上げられるか
固定型歩行器は持ち上げる動作が必要です。両手で5kg程度を毎回持ち上げられるかを、本人と一緒に試してみてください。難しい場合は車輪付きが正解。
介護保険でレンタルする3ステップ
歩行器のレンタルは、思ったよりシンプルです。
ステップ1|担当ケアマネに電話する
**「歩行器のレンタル相談がしたい」**と一言伝えるだけ。これで担当ケアマネが動き出します。
ステップ2|福祉用具相談員が自宅訪問
ケアマネが手配した福祉用具相談員が自宅を訪問し、本人の状態と家の環境を見たうえで、最適な歩行器を提案してくれます。
ステップ3|試用→契約→レンタル開始
提案されたモデルを実際に試用できます。納得したら契約してレンタル開始。月の自己負担額もここで確認できます。
まだ担当ケアマネがいない場合
「うちはまだ担当ケアマネがいない」「そもそも介護保険を申請していない」という方は、まずお住まいの地域包括支援センターに電話してください。
「親が歩行器を必要としそうで、介護保険のレンタルを考えています。何から始めればいいですか?」
これだけで、申請の流れからケアマネの紹介まで、一気に案内してもらえます。相談無料・年齢制限なしです。

ポケットに入れて帰っていただきたい、ひとつだけ
最後に、今夜あなたのポケットに入れて帰っていただきたいひとつだけ、お渡しします。

歩行器は、買わずに介護保険でレンタルする。 **「歩行器のレンタル相談がしたい」**と担当ケアマネに電話する——これだけ。
買って失敗する家族を、現場で何度も見てきました。歩行器は本人の状態に合わせて変えていくもの。だからレンタル一択です。
次の行動|今夜できる3つ
明日以降、歩行器を検討する前に、今夜のうちに次の3つから1つだけを動かしてみてください。
- 担当ケアマネさんの電話番号を確認して、**「歩行器のレンタル相談」**と短いメモを書いておく
- 担当ケアマネがいない場合は、お住まいの地域包括支援センターを検索してメモする
- 親と一緒に屋内・屋外を歩いてみて、どちらで歩行器が必要そうか目視チェックする
3つのうち1つだけでいいので、今夜中に動いておくと、明日からの動きが変わります。
このブログでは、こうした「家族が動くための具体的な手順」を、これからもひとつずつ書いていきます。関連記事として、




もよかったらどうぞ。
珈琲一杯分の時間、お付き合いいただきありがとうございました。
メガネ
出典・参考
- 厚生労働省「福祉用具貸与・特定福祉用具販売」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130503.html
- 厚生労働省「介護保険制度における福祉用具」
- 一般社団法人 日本福祉用具供給協会
- 公益社団法人 日本理学療法士協会「歩行補助具の選び方」 https://www.japanpt.or.jp/
※介護保険の福祉用具レンタル対象範囲、自己負担額(1〜3割)は、お住まいの市区町村やご本人の要介護度によって異なります。 具体的な料金・対象機種は、担当ケアマネジャー、または地域包括支援センターでご確認ください。
最終更新日:2026年5月





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